徳島大空襲

徳島大空襲

徳島大空襲（とくしまだいくうしゅう）は、第二次世界大戦の終盤、1945年7月4日未明に、日本の徳島県徳島市がアメリカ軍による大規模な空襲を受けた出来事です。この空襲は、市街地に甚大な被害をもたらしました。なお、徳島市は1945年6月から7月にかけて、この大空襲を含む計7回のB-29による空襲に遭っており、徳島県全体も複数の空襲に見舞われています。

作戦と実行

1945年7月3日午後4時23分（日本時間）、マリアナ諸島の基地からアメリカ陸軍航空軍第21航空軍に所属する合計501機のB-29が出撃しました。これらの機体は、高松、高知、姫路、そして徳島といった四国・関西地方の各都市を標的としていました。硫黄島を経由した後、徳島を目指したのは、同軍第314航空団に所属する129機のB-29でした。

アメリカ軍は徳島市を、神戸・大阪などの大都市への重要な食糧供給源である農業生産地域、瀬戸内海の東の玄関口としての海上交通の要衝、そして市内に存在する紡績工場や製糸工場といった軍需関連施設が存在する、戦略的に重要な地点と把握していました。

爆撃の経過と被害

7月4日の未明、午前1時24分に新町川河口付近から徳島市上空に侵入した爆撃機は、午前3時19分までの約2時間にわたり、市街地への焼夷弾投下を続けました。爆撃は、優秀な電波技術者を乗せた先導機が投下した焼夷弾による火災を目標に、後続の本隊が低空から大量の焼夷弾を投下するという方法で行われました。投下された焼夷弾は、AN-M47A2油脂焼夷弾とAN-M17テルミット・マグネシウム焼夷弾の合計で1050.8米トンに及びました。

この猛烈な爆撃により、当時の徳島市は市街地の約62%（諸説あり、米軍報告書では74%にあたる1.7平方マイル（約4.4平方キロ））が焼失したと徳島市は発表しています。人的被害も甚大で、死者は約1,000人（男性431人、女性553人、性別不明17人とする説も）、負傷者は約2,000人、被災者は70,295人、罹災世帯は17,183世帯に上りました。投下された焼夷弾は354,664本と記録されており、当時の市民一人あたり約3本の焼夷弾が降り注いだ計算になります。米軍の主要目標（M.P.I）は当時の徳島市最大の商店街であった元町付近に設定されていました。

1942年の文部省主催「幻の甲子園大会」で徳島商業が獲得した優勝賞状も、この空襲で焼失しました。

被災した施設と痕跡

米軍の指令により、県下最大の紡績工場であった敷島紡績株式会社、防毒兵器などを開発していた川崎航空株式会社、沖の州造船所といった軍需関連施設も爆撃を受け、壊滅的な被害を受け廃業に追い込まれました。

また、徳島城鷲の門、大滝山三重塔、春日神社、妙永寺などの数多くの神社仏閣といった貴重な文化財、徳島駅、徳島師範学校女子部、私立裁縫専修学校（現徳島文理大学）などの公共施設や学校、旧高原ビル（現国際東船場113ビル）、新町橋、福島新橋、聖パウロ三木・カトリック徳島教会、阿波国文庫など、市内の主要な建造物の多くも焼失または損傷しました。旧高原ビルのひび割れた窓ガラスや、徳島師範学校女子部の煉瓦塀の一部など、現在も空襲の痕跡が残る場所もあります。

街中の墓石、灯籠、石碑にも当時の弾痕や熱による変形が残されているほか、現在でも市内の工事現場などでは、溶解したガラス片や焼け焦げた瓦、レンガ、陶磁器などの空襲遺物が数多く出土しています。

避難と救護

焼夷弾の炎から逃れるため、多くの市民が眉山や吉野川へと避難しました。山からは、雨のように降り注ぐ焼夷弾と、炎上する市街地の凄惨な光景が見えたといいます。避難が間に合わなかった人々は、川や田んぼに身を隠し、ただ空襲の終わりを待つことしかできませんでした。空襲後、川から這い上がると、多くの遺体が流されていたという証言も残されています。寺町の東宗院山門は焼け残り、家を失った人々が一時的に身を寄せた場所となりました。

戦災による傷病者は、空襲直後は臨時の救護所で応急処置を受け、重傷者は市内の病院へ搬送されました。しかし、大空襲によって市内のほとんどの病院が機能を失ったため、戦災傷病者は県庁、鈴江病院、富田国民学校などに一時収容された後、県南の伝染病院や小学校などに広域に搬送されて治療を受けました。その後も、八万、富田両国民学校や四所神社に無料診療所が開設され、負傷者の手当にあたりました。

死没者の処理と慰霊

約1,000人もの犠牲者が出たため、通常の市営葬斎場では対応しきれず、多くの遺体は吉野川の河川敷で荼毘に付されました。遺体の収容は警察が担当し、火葬作業は数名の市職員で行われましたが、非戦災地区からの応援者の中には、目の前の惨状に耐えきれず逃げ出す者もいたほどでした。火葬されたお骨は一時的に下助任町の弘誓寺に納められ、9月2日に県市共催の合同慰霊祭が執り行われた後、身元が判明した遺骨から遺族に引き渡されました。

この空襲で社会運動家の村崎サイ氏も犠牲となりました。

戦後、城山の東二の丸天守跡には、徳島大空襲から10周年にあたる1955年7月4日、徳島戦災犠牲者慰霊塔が建立されました。現在も毎年7月4日には、徳島戦災死没者遺族会による慰霊祭が行われています。

徳島県には、大空襲以外にも、中島、蔵元、佐古、富岡、桑野、見能林、羽ノ浦などへの爆撃や、那賀川鉄橋空襲、そして連日のような艦載機による機銃掃射など、戦争末期に複数回の空襲がありました。

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