徳川吉孚

徳川吉孚（とくがわ よしざね）

徳川吉孚は、江戸時代中期の水戸藩における重要な人物であり、5代藩主徳川宗翰の母方の祖父にあたります。しかし、藩主の座を継ぐことなく、24歳という若さで生涯を終えました。

生涯

貞享2年（1685年）に、水戸藩主・徳川綱條の三男として江戸の駒込邸で誕生しました。母は落合老慶の娘・都禮（禅定院）です。幼名は菊千代と名付けられました。父・綱條が藩主となると、吉孚は世子となり、元服の際には5代将軍徳川綱吉から偏諱を受け、「吉孚」と名乗るようになりました。家臣からの信頼も厚く、父・綱條からも将来を大いに期待されていましたが、宝永6年（1709年）10月12日に志半ばで死去しました。享年は25歳でした。死後、「恭伯世子」という諡号が贈られています。

吉孚の死後、跡継ぎを失った綱條は、甥である高松藩主松平頼豊の長男・宗堯を養子に迎えました。その後、宗堯は吉孚の娘である美代姫（血縁上は宗堯の又従姉妹にあたる）と結婚し、宗翰をもうけ、徳川綱條の血筋を後世に伝えています。

経歴

1695年（元禄8年）8月25日：従五位上に叙位
1695年（元禄8年）12月4日：元服し、将軍徳川綱吉から偏諱を授かり吉孚と称す。従四位上に昇叙し、左衛門督に任官
1696年（元禄9年）12月4日：正四位下に昇叙し、右近衛権少将を兼任
1702年（元禄15年）11月15日：右近衛権中将に転任し、左衛門督を兼任
1708年（宝永5年）12月28日：従三位に昇叙し、右近衛権中将如元

系譜

正室：八重姫（養仙院） - 徳川綱吉養女、鷹司有隣軒長女
長女：美代姫（泰受院・純懿夫人） - 徳川宗堯御簾中

逸話

吉孚は、並外れた美貌の持ち主であったと伝えられています。「容顔端麗」で「都下第一ノ美男子」と評され、外出時にはその姿を一目見ようと多くの人々が集まったほどです。ある時、江戸で16歳の娘が吉孚の乗る駕籠を遮り、恋文を渡そうとしましたが、警護の者に捕らえられ、父親のもとに返されました。その娘はその後亡くなってしまったとされ、「恋慕遂ニ死ニ至ル」という悲しい逸話が残されています。この逸話は、吉孚の魅力が人々を惹きつけ、時に悲劇を生むほどであったことを物語っています。

演じた俳優

加賀爪清和（『水戸黄門』第1部 1969年）
* 小川拓哉（『水戸黄門』第37部 2007年）

備考

吉孚の名前は、「よしざね」ではなく「よしのぶ」と呼ばれていたという説もあります。

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