駕籠

駕籠（かご）の歴史と役割

駕籠は、人力によって運搬される伝統的な乗り物です。この乗り物は、江戸時代において特に一般的でしたが、明治に入って交通インフラが整備されると、次第に人力車に取って代わられるようになりました。駕籠は、座席部分を棒で吊り下げ、複数の人間がその棒を担ぎ上げて移動させる仕組みとなっています。

江戸時代の駕籠の種類

江戸時代において、駕籠にはさまざまな種類が存在しました。特に、公家や武家のために装飾が施された高級な駕籠は「乗物」と呼ばれ、大型で長柄のものは「長柄」と呼ばれました。その中でも、将軍が使用した「総網代」と呼ばれる漆仕上げの最高級駕籠は群を抜いて評価されていました。特に大名の間では、その地位に応じて駕籠の形式や装飾に差異が見られました。また、大名の側室が移動する際には、特別な「御忍び駕籠」が使用されていました。

町に住む庶民が使う駕籠は「町駕籠」と呼ばれ、普通の職業の人々も利用しました。江戸市中でよく見かける町駕籠には引き戸がついており、いくつかの種類が存在しました。たとえば、「宝泉寺駕籠」や「京四つ駕籠」などがその例です。

街道筋の駕籠屋と種類

五街道沿いには多くの駕籠屋があり、これらの駕籠は「道中駕籠」と総称されました。大別すると、「山篭」「問屋駕籠」「宿駕籠」の三種類がありました。山篭は山道専用の特別な駕籠、問屋駕籠は宿場を通過する武士専用の簡素な駕籠、宿駕籠は一般庶民向けに利用されるものでした。特に、庶民向けの宿駕籠は「雲助駕籠」とも呼ばれ、乗客との直接交渉により料金を決めていました。また、速度重視の「早駕籠」という特殊な駕籠も存在し、江戸から赤穂までを速やかに移動するために利用されました。

駕籠者と駕籠舁

駕籠を担ぐ者は「駕籠者」と呼ばれ、その中でも特に体力に自信のある者が選ばれました。これには、身長によって賃金が変わるという側面もありました。彼らは「陸尺」とも呼ばれ、その名は古代中国の重い輿車をに由来しています。一方で、一般庶民が乗る「町駕籠」の担ぎ手は「駕籠舁」と呼ばれ、街中で働いていました。

駕籠の文化的意義と影響

駕籠は、今では交通手段としての機能が失われていますが、さまざまな歴史的伝承や文化的要素が残っています。東京都江戸東京博物館や奈良県の猿沢池などでは、駕籠に乗る体験ができる施設も存在します。また、駕籠にまつわる事件としては「桜田門外の変」や「坂下門外の変」などがあり、歴史の一部として語り継がれています。

最後に

駕籠は、日本の交通史において重要な役割を果たした乗り物であり、その文化的意義は今でも多くの人々に親しまれています。未来に向けて、駕籠に関する知識や体験が広がることを期待しています。

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