徳川家康の洋時計

徳川家康の洋時計

徳川家康に贈られた洋時計は、1611年にスペイン国王フェリペ3世より家康に送られたもので、日本に現存する最古の時計として知られています。この洋時計は、家康の死後に久能山東照宮に祀られ、現在でも重要文化財に指定されています。2012年には、イギリスの大英博物館から調査が行われ、その良好な保存状態が報告されました。

概観

この洋時計のサイズは高さ21.5センチ、幅と奥行き共に10.6センチです。駆動方式はぜんまい式で、時打ち機能や目覚まし機能を備えた小型機械時計です。外装は金銅製の箱形で、ドーム状の屋根を持っています。左右の側面は扉式になっており、扉と背面には、ゴシック風のアーチから見える城砦風景が彫刻されています。また、ドームの表面には青海波の透かし彫りの金具が施され、内部には銀色の鐘が収められています。

時計の正面には、真鍮の金メッキで装飾された円形の文字盤があり、ローマ数字が「I」から「XII」まで刻まれています。文字盤の下には、時計職人ハンス・デ・エバロによる「1581年に私をマドリードで作った」という銘がスペイン語とラテン語で彫り込まれており、これがその時計の制作年と出所を明かす重要な情報となっていますが、2014年に新たに発見された銘版により、実際には1573年に別の時計師が製作したことが判明しました。

この時計には、秘められた歴史があり、携帯用の木製ボックスも付属しており、革で覆われた薄板の窓から時間を確認できる設計となっています。

歴史

時計の製作は、最初は1581年にスペインのマドリードで行われたと考えられていましたが、その後の調査で別の証拠が見つかり、実際には1573年にブリュッセルでニコラウス・デ・トロエステンベルクによって製作されたことが明らかになりました。デ・エバロはフェリペ2世の時計師で、多くの優れた時計を手掛けていましたが、家康へ贈られる時計の来歴は不詳です。

この時計の日本への渡来は、1609年に、日本近海で暴風雨に遭ったフィリピンのサン・フランシスコ号によってもたらされました。この船は、日本の村に漂着し、徳川家康はその乗組員を保護しました。この際に、スペインの臨時大使であるドン・ロドリゴが家康と面会し、時計が贈られることになりました。

家康はこの時計を非常に気に入ったものの、日本の時法との違いから実際には使用しなかったため、時計は時間が経過する中で内部の機械が良好な状態を維持していました。家康の死後、この時計は遺品として久能山東照宮に収められました。

修理と復活

1948年、日本放送協会（NHK）が時計の音をラジオで初めて紹介しましたが、その後、時計には適切な手入れがされていなかったため、大きな錆が付いており動かなくなっていました。これを受け、1960年代に時計師たちによる手入れが行われ時計は再び動き出しました。

1955年には、時計のスペインに存在する姉妹時計との鳴き合わせが行われるなど、時計の存在感が増していきました。1955年には、貴重な歴史的品であるこの時計が盗難事件に巻き込まれることとなりましたが、幸いにも無傷の状態で戻ってきました。

近年の調査

1979年にこの時計は重要文化財に指定され、2022年現在、久能山東照宮博物館に展示されています。2012年には、イギリスの大英博物館の専門家による内部調査が行われ、時計の保存状態の良さが示された結果、非常に貴重な文化財であることが再認識されました。また、2014年に別の歴史的な事実が明らかになり、時計の制作年や製作地に関する新たな情報が発表され、さらなる研究の必要性が浮き彫りになりました。この時計は、単なる時間を測る道具以上に、歴史と文化の交差点としての重要な役割を果たしているのです。

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