徳川貞子

徳川貞子：激動の時代を生きた皇女

徳川貞子（とくがわ さだこ）は、嘉永3年（1850年）に水戸藩主・徳川斉昭の十一女として生まれました。皇族としては、熾仁親王妃貞子（たるひとしんのうひ さだこ）として知られています。短い生涯でしたが、幕末から明治へと移り変わる激動の時代を生きました。

生い立ちと教育

貞子は、駒込の水戸藩下屋敷で誕生しました。母は万里小路睦子。同母兄弟には徳川昭武、土屋挙直がいます。異母兄には徳川慶喜、徳川慶篤がいます。幼少の頃は茂姫、後に繁君とも呼ばれていました。和歌と国学を母の睦子と小池道子（水戸藩士小池友徳の姉で、後に宮中女官となる）から学び、書は父・斉昭の正室である登美宮吉子女王と義父の有栖川宮幟仁親王から学びました。吉子女王と睦子は共に京出身であったため、親交が深かったと伝えられています。

熾仁親王との婚約、そして結婚

慶応3年（1867年）、貞子は兄・徳川慶喜の養女として有栖川宮熾仁親王と婚約しました。嫡母である吉子女王、長兄・慶篤の正室である幟子女王も有栖川宮の出身であり、水戸徳川家と有栖川宮は縁戚関係にありました。熾仁親王はかつて和宮親子内親王と婚約していましたが、徳川家茂との縁談により解消されており、その代わりとして貞子が選ばれたのです。

しかし、大政奉還や戊辰戦争など、時代は大きく揺れ動きました。そのため、婚儀は延期され、明治3年（1870年）2月になってようやく行われました。この時、兄・慶喜は朝敵のままであったため、貞子は慶喜との縁組を解消して婚儀に臨むこととなりました。

突然の死

結婚からわずか2年後、貞子は熾仁親王が知藩事として福岡に赴任中に丹毒を患い、東京の有栖川宮邸で亡くなりました。享年23（満21歳）。東海寺に葬られましたが、後に豊島岡墓地に改葬されました。熾仁親王との同棲生活は、わずか1年半という短いものでした。

貞子の死後

貞子の死後、熾仁親王は溝口董子と再婚しました。興味深いことに、董子は貞子のはとこにあたります。（董子の母方の祖父・土屋彦直と貞子の祖父・徳川治紀は兄弟にあたります。）

徳川貞子は、時代の波に翻弄されながらも、皇室と徳川家を結ぶ重要な役割を果たしました。彼女の短い生涯は、幕末から明治への移行期における皇室と徳川家の関係を考える上で、貴重な手がかりを与えてくれます。

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