徽子女王

徽子女王について

徽子女王（きし（よしこ）じょおう）は、平安時代中期に著名な歌人であり、式部卿宮・重明親王の第一王女であった。彼女の母は藤原忠平の次女、すなわち寛子であり、朱雀天皇朝の伊勢斎宮及び後の村上天皇女御として知られています。そのため、彼女は斎宮女御として多くの人々に親しまれ、時折承香殿女御や式部卿の女御とも称されました。また、三十六歌仙の一員としても名を残しています。

略歴

承平6年（936年）9月12日、徽子女王は8歳で伊勢斎宮に卜定され、承平7年（937年）には初斎院入りを果たしました。天慶元年（938年）には10歳で伊勢へ群行し、この行事は朱雀天皇が物忌中であったため、外祖父の摂政・藤原忠平が執り行いました。天慶8年（945年）、母の死により17歳で退下し、その後帰京。天暦2年（948年）、叔父・村上天皇の招きに応じて20歳で入内し、さらに女御の宣旨を受けました。彼女の子供には規子内親王（第4皇女）と1人の皇子がいます。

徽子女王は、藤原家につながる貴族的な背景も持ち、多くの才能に恵まれていました。有名な七弦琴の名手としても知られ、彼女の詠歌には琴に関連するものが多く、特に『夜鶴庭訓抄』では琴を弾く手を特に大切にしたという逸話が残っています。天暦10年（956年）、彼女は「斎宮女御徽子女王歌合」を開催し、天徳3年（959年）には「斎宮女御徽子女王前栽合」を主催するなど、文化的・文雅な側面を示す行動が多く残っています。

康保4年（967年）には村上天皇が崩御し、以後は規子内親王と共に私邸で暮らしました。天延3年（975年）、規子内親王が円融天皇の斎宮に選ばれ、さらには初斎院に入った際、徽子女王もこれに同行します。その後、彼女は前例のない形で斎宮と共に伊勢に向かい、この事件は『源氏物語』にも影響を与えたと言われています。永観2年（984年）に規子内親王が斎宮を退下した後、徽子女王も京へ戻りましたが、この頃にはすでに病に侵されており、同年に57歳で亡くなりました。

人物像

多くの歌人が活躍する平安時代の後宮の中で、徽子女王は斎宮での経験と高貴な背景を持ちながらも、頼れる後見人を欠き、特に父国重明親王、外祖父藤原忠平の死後は、内邸にこもりがちとなったと伝えられています。それでも『栄花物語』には、村上天皇が彼女を恋しく思い、多くの歌を交わしたことが記されており、彼女の存在感は高く評価されていました。

徽子女王の死亡後、彼女の名声はますます高まり、源順や平兼盛といった名歌人たちとの交流が続き、村上天皇の時代の文化的なサロンとしても知られるようになりました。また、彼女が詠んだ歌の多くは薨後に集められた私家集『斎宮女御集』に収められ、その優雅な調べは彼女自身の品位を示しています。その中には、彼女が交わした多くの歌や逸話が残っており、その魅力は今なお色褪せることはありません。

代表歌

徽子女王の代表的な和歌の中には、以下のようなものがあります：

• - 琴の音に峰の松風かよふらしいづれのをよりしらべそめけむ
• - 世にふればまたも越えけり鈴鹿山むかしの今になるにやあるらむ
• - 大淀の浦たつ波のかへらずは変はらぬ松の色を見ましや

絵画と場面

三十六歌仙の一員として、徽子女王は多くの歌仙絵にも描かれています。彼女は高貴な装束をまとい、しっかりとした姿勢で描かれていることが多く、室町時代には作品としての価値が高まり、特にその美しさは注目を集めました。

また、映画『陰陽師0』にも登場し、近代においても彼女の影響が続いています。彼女の人生と業績は、これからも多くの人々に語り継がれることでしょう。

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