志村車両検修場
東京都板橋区高島平に位置する志村車両検修場は、都営地下鉄三田線の運行を支える重要な拠点です。この施設は、車両の留置、検査、整備を行う主要な役割を担っており、東京都交通局の志村庁舎内にあります。志村庁舎は三田線の中枢機能が集約されており、車両検修場のほか、線路の保守を担当する志村保線管理所や乗務員が所属する高島平乗務管理所、さらには職員のための志村寮などが併設されています。施設名に「志村」と冠していますが、敷地の大部分は高島平や西台といった地域に位置しており、志村という地名からは外れています。最寄りの駅としては高島平駅からの入出庫線が接続していますが、地理的には西台駅のすぐ北側に隣接しています。
この車両検修場の歴史は、都営地下鉄6号線（現在の三田線）が志村（現在の高島平）と巣鴨の間で開業した1968年11月に始まります。この時、都営地下鉄としては2番目の車両基地となる志村検車場が設けられました。翌1969年9月には、車両の重要部検査や全般検査を行うための整備工場として、志村車両工場が発足しました。開業当初の車両基地は、周辺に建物が少なく、広々とした「青天井」のような状態だったといいます。
志村車両検修場の最大の特徴の一つは、そのユニークな構造にあります。1970年には、敷地の上部空間を有効に活用するため、人工地盤が建設されました。この人工地盤の上には、都営住宅や東京都住宅供給公社の住宅、そしてかつては板橋区立高島第四小学校（現在は廃校）が建てられました。車両基地の上にこれほど大規模な構造物を建設することは当時珍しく、空間の有効活用の一例として注目を集めました。人工地盤が雨風を防ぐことから、かつて上野動物園で運行されていたモノレールの二代目車両「M形」の車体が長期間保管されていたこともあります。
組織面では、2000年4月にそれまで別組織であった志村検車場と志村車両工場が統合され、現在の志村車両検修場が誕生しました。交通局志村庁舎は、三田線の中枢として、先述の保線管理所や乗務管理所なども擁しています。さらに、東京都交通局の組織としては、都電荒川線の車両を担当する荒川車両検修所や、日暮里・舎人ライナーの舎人車両検修所も志村車両検修場の下部組織として位置づけられています。荒川車両検修所は、都電の検査業務を行うほか、廃止された上野モノレールの検査業務も担当していました。
施設は、時代の変化に合わせて機能強化が図られています。三田線は開業当初4両編成、その後6両編成で運行されていましたが、近年導入された8両編成での運行拡大を見据え、多くの留置線が8両編成を2本縦列に留置可能な設計となっています。工場施設も併設されており、定期検査を終えた車両の性能確認を行うための試運転線も備わっています。試運転線の上空には志村寮が、そして留置線の上空には人工地盤を介して公営住宅や高島平乗務管理所が建っています。なお、都営地下鉄の車両基地は多くが地下にありますが、地上に位置するのは志村車両検修場と浅草線の馬込車両検修場のみであり、関係者以外が地上で車両を目にする機会があるのはこれらの基地に限られます。車両の重要部検査や全般検査といった専門的な業務の一部は、2010年4月から東京交通サービスへ委託されており、実際の作業はJR東日本テクノロジーが担当しています。
現在、志村車両検修場には、都営三田線の主力車両である6300形や最新型の6500形が留置されています。さらに、三田線と相互直通運転を行っている東急目黒線や新横浜線、相模鉄道線からの車両（東急3000系、5080系、3020系、相鉄21000系）も留置されていますが、相鉄車両は原則として夜間滞泊は行わず、昼間のみの滞留となっています。過去には、三田線の旧型車両である6000形や、都営新宿線開業に先立ち試運転が行われた10-000形試作車が配置されていたこともあります。特に10-000形試作車は、新宿線が建設中だったため志村車両検修場で試運転が繰り返され、その後量産化改造を受けて新宿線へ転用されたという経緯があります。
車両の搬入経路にも特徴があります。都営地下鉄では、製造メーカーから貨物駅までは鉄道で輸送された後、基地までは大型トレーラーによる陸送が行われています。使用される貨物駅は年代や車両形式によって異なり、かつての芝浦貨物駅や、現在の川崎貨物駅、越谷貨物ターミナル、新座貨物ターミナルなどが利用されてきました。
その他、志村車両検修場は映画やテレビドラマのロケーションとしても利用されてきました。1975年公開の映画「新幹線大爆破」では、基地構内で犯人と警察官が追走するシーンが撮影されており、当時の新型車両だった6000形が入庫する様子なども記録されています。また、開設当初から東映系の作品を中心に、構内や人工地盤上などで多くの撮影が行われています。
このように、志村車両検修場は単なる車両基地としてだけでなく、人工地盤の有効活用事例や、都営交通の組織体制、さらには映像作品の舞台としても、多角的な側面を持つ興味深い施設と言えます。都営三田線の円滑な運行を、日々、この場所から支え続けています。
この車両検修場の歴史は、都営地下鉄6号線（現在の三田線）が志村（現在の高島平）と巣鴨の間で開業した1968年11月に始まります。この時、都営地下鉄としては2番目の車両基地となる志村検車場が設けられました。翌1969年9月には、車両の重要部検査や全般検査を行うための整備工場として、志村車両工場が発足しました。開業当初の車両基地は、周辺に建物が少なく、広々とした「青天井」のような状態だったといいます。
志村車両検修場の最大の特徴の一つは、そのユニークな構造にあります。1970年には、敷地の上部空間を有効に活用するため、人工地盤が建設されました。この人工地盤の上には、都営住宅や東京都住宅供給公社の住宅、そしてかつては板橋区立高島第四小学校（現在は廃校）が建てられました。車両基地の上にこれほど大規模な構造物を建設することは当時珍しく、空間の有効活用の一例として注目を集めました。人工地盤が雨風を防ぐことから、かつて上野動物園で運行されていたモノレールの二代目車両「M形」の車体が長期間保管されていたこともあります。
組織面では、2000年4月にそれまで別組織であった志村検車場と志村車両工場が統合され、現在の志村車両検修場が誕生しました。交通局志村庁舎は、三田線の中枢として、先述の保線管理所や乗務管理所なども擁しています。さらに、東京都交通局の組織としては、都電荒川線の車両を担当する荒川車両検修所や、日暮里・舎人ライナーの舎人車両検修所も志村車両検修場の下部組織として位置づけられています。荒川車両検修所は、都電の検査業務を行うほか、廃止された上野モノレールの検査業務も担当していました。
施設は、時代の変化に合わせて機能強化が図られています。三田線は開業当初4両編成、その後6両編成で運行されていましたが、近年導入された8両編成での運行拡大を見据え、多くの留置線が8両編成を2本縦列に留置可能な設計となっています。工場施設も併設されており、定期検査を終えた車両の性能確認を行うための試運転線も備わっています。試運転線の上空には志村寮が、そして留置線の上空には人工地盤を介して公営住宅や高島平乗務管理所が建っています。なお、都営地下鉄の車両基地は多くが地下にありますが、地上に位置するのは志村車両検修場と浅草線の馬込車両検修場のみであり、関係者以外が地上で車両を目にする機会があるのはこれらの基地に限られます。車両の重要部検査や全般検査といった専門的な業務の一部は、2010年4月から東京交通サービスへ委託されており、実際の作業はJR東日本テクノロジーが担当しています。
現在、志村車両検修場には、都営三田線の主力車両である6300形や最新型の6500形が留置されています。さらに、三田線と相互直通運転を行っている東急目黒線や新横浜線、相模鉄道線からの車両（東急3000系、5080系、3020系、相鉄21000系）も留置されていますが、相鉄車両は原則として夜間滞泊は行わず、昼間のみの滞留となっています。過去には、三田線の旧型車両である6000形や、都営新宿線開業に先立ち試運転が行われた10-000形試作車が配置されていたこともあります。特に10-000形試作車は、新宿線が建設中だったため志村車両検修場で試運転が繰り返され、その後量産化改造を受けて新宿線へ転用されたという経緯があります。
車両の搬入経路にも特徴があります。都営地下鉄では、製造メーカーから貨物駅までは鉄道で輸送された後、基地までは大型トレーラーによる陸送が行われています。使用される貨物駅は年代や車両形式によって異なり、かつての芝浦貨物駅や、現在の川崎貨物駅、越谷貨物ターミナル、新座貨物ターミナルなどが利用されてきました。
その他、志村車両検修場は映画やテレビドラマのロケーションとしても利用されてきました。1975年公開の映画「新幹線大爆破」では、基地構内で犯人と警察官が追走するシーンが撮影されており、当時の新型車両だった6000形が入庫する様子なども記録されています。また、開設当初から東映系の作品を中心に、構内や人工地盤上などで多くの撮影が行われています。
このように、志村車両検修場は単なる車両基地としてだけでなく、人工地盤の有効活用事例や、都営交通の組織体制、さらには映像作品の舞台としても、多角的な側面を持つ興味深い施設と言えます。都営三田線の円滑な運行を、日々、この場所から支え続けています。
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