応声虫

応声虫（おうせいちゅう）

応声虫、または応声は、中国や日本の古代文献に登場する不思議な病気で、特定の虫が引き起こすとされています。この病気は、人間の体内で異常な症状を引き起こし、入ってきた虫が腹の中から声を発すると言われています。これは、古代の説話や随筆集に見られる内容であり、主に中国の『朝野僉載』や『文昌雑録』、日本の『新著聞集』や『塩尻』などに記されています。

症状の実態

応声虫病にかかると、最初は何も応答しない人間の腹から質問に対して答える声が聞こえるとされています。この現象に対処するためには、古代には雷丸という漢方薬が有効とされており、これを服用することで寄生虫が体外に出て行くと考えられていました。これは、古い文献においても確認されており、応声虫の存在はもはや否定できない事実として扱われています。

興味深いことに、応声虫は中国語において「自分の意見を持たず、周囲に流される者」という風刺的な意味でも用いられることがあります。このため、この病気はしばしば社会的な批判の象徴とも見なされています。

日本における事例

日本でも、応声虫は回虫のような寄生虫によって引き起こされる病気とされています。症状には高熱が10日間も続くことや、腹部に口のような出来物ができることが含まれます。この物体は患者が発する言葉を模倣し、さらにはその物体自体が食べ物を要求することもあるため、非常に厄介です。食事を拒否すると、高熱を引き起こしたり、罵声を浴びせたりすることがあるため、患者は大変な苦しみを味わうことになります。

江戸時代の説話集には、特に有名な事例が記載されています。元禄16年（1703年）には、京都の油小路に住む男性が応声虫に悩まされていました。この男性は、高熱や口からの罵詈雑言に苦しみ続け、様々な薬を試みるも効果がありませんでした。最後には、名医が診察し、特別な調合薬を服用することでようやく虫が体外に排出されました。

また、元文3年の伝説では、奥丹波の女性が応声虫の病に取りつかれ、その声が見世物小屋の業者の耳に入ります。しかし、彼女の夫は周囲の人々に恥をかかせたくないと、見世物には出さないと拒否しました。こうして業者の意図は挫かれました。

病の起源と考察

これらの物語は、実際の寄生虫、特に回虫に由来していると考えられています。腹に寄生した回虫によって異常な空腹感や、虫下しによって肛門から排出される死骸が描写されている部分があります。しかし、応声虫は元々中国からの伝説であり、日本の文献に現れる際には、人面瘡の要素が加わるなどして独自の色合いを持つようになりました。このように、中国の物語が日本に伝わり、地元の文脈に即した形で再構築されたとする見方も存在します。

結論

応声虫にまつわる伝説や症例は、古代からの興味深い文化的遺産として残っています。それは、病気の恐怖を示すだけでなく、人間社会における心理や行動をも反映しているのかもしれません。

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