急性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫 (acute subdural hematoma)

急性硬膜下血腫とは、頭部外傷によって、硬膜と脳の間に短期間で血腫が形成される状態を指します。この病状は通常、非常に重症とされ、適切な診断と治療が不可欠です。

血腫の形成メカニズム

急性硬膜下血腫は主に、脳の表面にある静脈である架橋静脈や静脈洞が破裂することによって発生します。これにより、脳と硬膜の間に静脈性の出血が生じ、血腫が形成されます。一般的に、急性硬膜下血腫は2つのタイプに分けられます。一つは脳挫傷を伴い、この挫傷部位から血液が硬膜下に漏れ出すもので、もう一つは脳挫傷がほぼない状態で、脳と硬膜を結ぶ静脈が破断することで発生します。特に小児の場合、傍矢状洞部に形成される急性硬膜下血腫がその代表例です。

症状

この病状に伴う症状は、受傷直後から見られることが多く、意識の混濁や障害が一般的です。また、めまいや嘔吐、悪心といった症状も現れることがあります。脳圧が高まると、さらに重篤な状態を引き起こし、除脳硬直や瞳孔の異常な反応が観察されることもあります。

診断法

急性硬膜下血腫の診断は、主に頭部のCTやMRIを用いて行います。これらの検査により、血腫が三日月状もしくは凸レンズ状の高吸収領域として現れ、その結果、脳の位置がずれる「midline shift」が確認されることがあります。

治療方法

静脈の断裂による場合、急速に開頭手術を行い、血腫を除去します。その後、続発する脳浮腫に対処するために薬剤（例：グリセリン）が使用されることがあります。脳浮腫が悪化すると脳ヘルニアのリスクが高まります。脳挫傷を伴う場合には、血腫の除去に加え、脳圧を下げるためのステロイドが投与されることが一般的です。また、場合によっては挫傷部の切除や減圧開頭術が行われることもあります。手術の方針は、各症例の状況や血腫の大きさ、脳挫傷の程度によって判断されます。

予後

早期に開頭血腫除去手術が行なわれても、その後の予後は症例によって異なります。脳挫傷や外傷性クモ膜下出血を併発している場合、通常は予後が悪化します。特に脳挫傷を伴う例では、血腫の容量だけでなく、挫傷の程度や続発する脳浮腫の影響が大きく関与します。また、静脈の断裂による典型的なケースでは、初期の損傷が少なかったとしても、特に乳幼児において出血が迅速に進行する場合には、予後が極めて悪化することがあります。

関連項目

• - 慢性硬膜下血腫
• - 脳神経外科学
• - インカ文明（この病気を開頭手術で治した痕跡のある頭蓋骨が発見されています）

外部リンク

• - 急性硬膜下血腫（日本脳神経外科学会の脳神経外科疾患情報ページ）

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