恩賜の軍刀

恩賜の軍刀とは

恩賜の軍刀とは、大日本帝国陸軍・大日本帝国海軍の軍学校、特に陸軍大学校（陸大）において、成績優秀な卒業生に天皇から授与された軍刀のことです。これらの軍刀は、単なる武器としてだけでなく、名誉と栄誉の象徴として、非常に重要な意味を持っていました。

概要

「恩賜の軍刀」という名称は、軍刀の鎺（ハバキ）の部分に「御賜」という刻印があることに由来します。これは「恩賜」ではなく、「御賜」と刻印されている点が特徴です。陸軍大学校では、明治24年（1891年）の第7期卒業生から、成績上位者に軍刀が下賜されるようになりました。それ以前の期では、望遠鏡が贈られていました。

陸大の卒業生の人数が50〜60名程度で推移するようになると、卒業成績上位6名に「恩賜の軍刀」が授与されることが慣例となり、この6名は「軍刀組」または「恩賜組」と呼ばれ、特別な存在として扱われました。

各学校の恩賜品

恩賜品は、陸軍大学校の軍刀だけではありません。各軍学校では、それぞれの特性に応じた恩賜品が授与されていました。

陸軍砲工学校高等科：軍刀
陸軍幼年学校・陸軍予科士官学校・陸軍士官学校／陸軍航空士官学校・陸軍経理学校・陸軍砲工学校普通科：銀時計
陸軍騎兵学校：指揮刀（長期学生）、銀時計（甲種学生・乙種学生）
海軍兵学校・海軍機関学校・海軍経理学校：短剣
海軍大学校甲種学生：長剣

これらの恩賜品は、各学校の教育課程や学生の特性を反映したものでした。また、各学校で授与される人数や恩賜品の種類は、時代によって変遷がありました。

上記は主に将校や士官を対象とする軍学校ですが、陸軍の空中勤務者養成課程である陸軍飛行学校や、海軍の下士官兵搭乗員養成過程である飛行練習生／偵察練習生でも、成績優秀者には銀時計が授与されました。

恩賜品の授与

陸士、航士、陸大、海大では、大元帥たる天皇が自ら行幸し、侍従武官や校長を経由して恩賜品を授与しました。一方、遠隔地にある海兵やその他の学校では、皇族や侍従武官が代理で授与を行いました。

このように、恩賜品の授与は、単なる褒賞ではなく、天皇からの特別な恩恵とされ、軍人にとって非常に重要な儀式でした。

恩賜品の種類と意味

軍刀：武人の魂とも言える刀は、武勲を称え、さらなる精進を促す象徴でした。
短剣・長剣：軍刀と同様に、名誉と武道の象徴として授与されました。
時計：時間を守ることは、軍人にとって重要な義務であり、規律の象徴として贈られました。

まとめ

恩賜の軍刀は、単なる刀剣ではなく、天皇からの信頼と期待の象徴であり、軍人にとって最高の栄誉でした。また、その他の恩賜品も、それぞれの役割と意味を持ち、軍人の育成と士気向上に貢献しました。

参考資料

秦郁彦 編著『日本陸海軍総合事典』（第2版）東京大学出版会、2005年。
山口宗之『陸軍と海軍－陸海軍将校史の研究』（増補）清文堂、2005年。

関連項目

恩賜の銀時計
恩賜のたばこ
永田鉄山
石原莞爾
田中静壱
西田正雄

もう一度検索