恵美須ヶ鼻造船所跡

恵美須ヶ鼻造船所跡について

恵美須ヶ鼻造船所跡（えびすがはなぞうせんじょあと）は、山口県萩市に所在する、長州藩が設立した洋式の造船所の遺跡です。この場所は、当時の西洋技術を取り入れた洋式帆船の建造が行われており、その歴史的価値から国の史跡に指定されています。また、2015年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

概要

この造船所は、萩市椿東中小畑に位置し、1856年に設立されました。ここでは、ロシアの技術によって建造された丙辰丸や、オランダの技術で作られた庚申丸が作られましたが、特に両国の技術が共存している珍しい例として評価されています。当時は西洋の造船技術を取り入れる試みが行われており、近代化への道筋を示す貴重な遺産とされています。

この場所には、当時の船の資料や技術が残されており、2013年には国の史跡として認定され、2007年には経済産業省の近代化産業遺産に選出されました。また、2009年には、他の産業遺産ともに九州・山口の近代化産業遺産群の一部として文化遺産の暫定リストに追加されました。現在、当時の石造防波堤がその形を留めており、史料に記された「今浦波戸」であると考えられています。

歴史的背景

1853年、アメリカやイギリス、ロシアの軍艦が相次いで日本近海に現れ始め、江戸幕府や諸藩にとって大きな脅威となりました。この状況を受けて、幕府は大型軍艦の建造を禁止していた大船建造禁止令を撤回しました。長州藩も安政の改革の一環として、軍艦の建造を行うことになりました。

軍艦の建造にあたり、藩内の財政的な理由から初めは消極的な姿勢を見せましたが、桂小五郎などの提案を受けて、藩主である毛利敬親が洋式軍艦の建造を決定しました。1854年には、実際に本格的な洋式帆船である君沢形（スクーナー）軍艦を作るため、伊豆国戸田村から船大工の尾崎小右衛門が招かれました。これにより、小畑浦に軍艦製造所が設立され、最初の洋式軍艦である丙辰丸が完成しました。さらに、1860年には庚申丸が建造され、この時に使用された鉄は伝統的なたたら製鉄によって造られたものであり、当時の技術の融合が見られます。

しかし、次第に蒸気船が主流となり、長州藩は国外からの蒸気船購入にシフトしたため、造船所は次第に閉鎖されることとなりました。

アクセス

恵美須ヶ鼻造船所跡は、山口県萩市椿東に位置し、車では絵堂インターチェンジから約30分、JR西日本の東萩駅からは5分ほどの距離です。また、萩反射炉からも車で2分と近く、訪問しやすい場所に位置します。

まとめ

恵美須ヶ鼻造船所跡は、西洋の造船技術を日本に導入した歴史的な遺産であり、その重要性を知るための訪問はとても意義深いものです。近代日本の技術の発展を理解するためにも、是非訪れてみることをお勧めします。

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