悪魔くん (1966年のテレビドラマ)

悪魔くん

『悪魔くん』は、水木しげるの同名漫画を原作とした、東映制作の特撮テレビドラマです。1966年 10月6日から1967年 3月30日まで、NETテレビ（現・テレビ朝日）系列で全26話が放送されました。モノクロ作品でありながら、その独特な世界観と怪奇な演出で、当時の子供たちを魅了しました。

あらすじ

物語は、1万人に1人のほくろを持つ天才少年・山田真吾が悪魔メフィストを呼び出すところから始まります。真吾は「悪魔くん」と呼ばれ、メフィストと共に、次々と現れる妖怪や怪獣と戦います。人間の姿をしたメフィストは、チョコレートを好むなど、どこかコミカルな一面も持ち合わせています。2人は、時に協力し、時に反発しながら、様々な敵に立ち向かっていきます。

登場人物

主要人物

山田真吾（やまだしんご）
演 - 金子光伸
主人公。通称「悪魔くん」。Vネックのセーターがトレードマークの天才少年。1万人に1人のほくろを持ち、悪魔を呼び出すことができる。

メフィスト（兄）
演 - 吉田義夫（第1話 - 第10話、第19話）
真吾が呼び出した悪魔。チョコレート好き。本名はメールセデス・ニチ・メフィスト。

メフィスト（弟）
演 - 潮健児（第10話 - 第26話）
兄メフィストの弟。地獄警察に連行された兄に代わり、悪魔くんとタッグを組む。本名はシラーサルタン・モメット・メフィスト。

貧太
演 - 渡辺義文
真吾の友人。ロイド眼鏡が特徴。

情報屋
演 - 鈴木芳生（第1話、第2話）→ 塩屋浩三（第3話 - 第26話）
真吾の友人。野球帽とブレザーが特徴。

山田家

山田春吉（やまだはるきち）
演 - 三遊亭歌奴
真吾の父。タクシードライバー。

山田松江（やまだまつえ）
演 - 楠トシエ
真吾の母。

山田道子（やまだみちこ）
演 - 小笠原あずさ
真吾の妹。

その他の登場人物

ファウスト
演 - 浜村純
第1話に登場。真吾に悪魔の召喚方法とソロモンの笛を与えた老人。

登場悪魔・妖怪・怪物

本作品には、毎回様々な妖怪や怪物が登場し、悪魔くんたちを苦しめます。以下に主なものを紹介します。

ガンマー
第1話に登場。全身に100個の目を持つ妖怪。別名「眼魔」。
化け烏
第2話に登場。巨大な烏の姿をした妖怪。正体は烏人。
烏人
第2話に登場。化け烏の正体。人間に恨みを持っている。
ミイラ妖怪（ミイラ男）
第3話に登場。古代エジプトの魔術師ビアンカがミイラ化した妖怪。
大海魔（大海魔パイドン）
第4話に登場。海難事故を引き起こす妖怪。アンコウや尼僧の姿に化ける。
ペロリゴン
第5話に登場。強力な消化液を持つ妖怪。地蔵に封印されていた。
マネキン妖怪
第6話に登場。廃品になったマネキンが動き出した妖怪。石膏の粉で人間をマネキンに変える。
山彦妖怪
第7話に登場。祠の封印が解かれたことで復活した妖怪。
水妖怪
第8話に登場。水死体の妖怪。人に憑依したり、巨大化する能力を持つ。
ドクトル・キューラ
第9話に登場。本家の吸血鬼。メフィストを罠にはめようとする。
雑魚吸血鬼
第9話に登場。ドクトル・キューラの手下。ニンニクが苦手。
シバの大魔神
第10話に登場。シバ神殿を守る大魔神像。眼から怪光線を放つ。
呪術師ザンバ
第10話に登場。シバ神の使徒。
三つ目妖怪人（守護神ボルガ）
第10話に登場。シバ神の使徒。
油絵妖怪
第11話に登場。油絵に宿る妖怪。人間の魂を食べる。
狼男（狼人間）
第12話に登場。満月草で狼に変身した人間。
ドクロン（ドクロン妖怪）
第13話に登場。ドクロの顔を持つ妖怪。鏡の間から地獄に引きずり込む。
妖術師バラモン
第14話に登場。メフィストによって地獄に閉じ込められた妖術師。
としぬすみ
第15話に登場。人間を老化させる能力を持つ妖怪。
ぴんはね（ピンハネ）
第15話に登場。としぬすみの手下。
モルゴン
第16話に登場。モルモットが巨大化した妖怪。
黒猫妖怪
第17話に登場。館の主。女性を冷凍保存し食べようとする。
幽吉
第17話に登場。黒猫妖怪の手下。タクシードライバーに化ける。
お婆婆
第17話に登場。黒猫妖怪の館に住んでいる。
雪女
第18話に登場。雪山の妖怪。冷気を吐き相手を凍結させる。
閻魔大王
第19話に登場。
妖術師ブラッカー
第19話に登場。妖術師バラモンの弟。
未来人兄妹ロロとピッチ
第20話に登場。25世紀から来た兄妹。
化石人ジュラタン
第21話に登場。第三氷河期に生息していた化石人。
鬼婆
第22話に登場。出刃包丁を持つ妖怪。生贄にされた恨みを晴らそうとする。
化けぐも
第23話に登場。蜘蛛の巣を吐く妖怪。人に化けることができる。
カマキリ仙人
第24話に登場。鎌を使う仙人。情報屋の先祖に鎌を奪われた。
ダイヤモンド妖怪（ダイヤ妖怪）
第25話に登場。ダイヤに宿り、メフィストとフェンシングをする。
死神第四号
第26話に登場。虫眼鏡を落とした人間を黄泉の世界に連れて行こうとする。

スタッフ

企画: 平山亨、坪井久智
原作: 水木しげる
監督: 田口勝彦ほか
脚本: 高久進、伊上勝、桂真佐喜ほか
音楽: 山下毅雄
制作: 東映東京制作所

主題歌

オープニングテーマ:「悪魔くんの歌」
作詞 - 水木しげる、八手三郎 / 作曲 - 山下毅雄 / 歌 - 水島早苗
エンディングテーマ:「悪魔くん」
作詞 - 水木しげる / 作曲 - 山下毅雄 / 歌 - ボーカル・ショップ

制作の背景

本作は、東映東京制作所初の本格的な特撮テレビドラマです。当初は『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ化が企画されていましたが、制作費の問題から実写化へと変更されました。この作品の成功が、『鬼太郎』のアニメ化へと繋がりました。

プロデューサーの平山亨は水木しげるのファンで、原作を忠実に再現しようと努めました。しかし、貸本漫画版のグロテスクな表現はテレビには不向きであったため、少年マガジン版を原作とすることになりました。水木自身も、テレビ向けにアレンジすることに協力的でした。

制作費は予算の3倍にも膨れ上がったと言われており、そのクオリティの高さが伺えます。また、メフィスト役の俳優交代劇は、作品の大きな転換点となりました。

放送とその後

関東地方では、『ハリスの旋風』というアニメと裏番組であったため、マガジン編集部は両作品の扱いに苦労したようです。また、妖怪を題材にしているため、スポンサーが付きにくく、2クールで終了することとなりました。しかし、本作は後の特撮作品に大きな影響を与え、多くのファンを魅了し続けています。

その他

2010年のNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』では、本作の誕生秘話が描かれました。また、2017年にはYouTubeで配信が行われました。