悪魔のトリル

ヴァイオリンソナタ ト短調『悪魔のトリル』

ジュゼッペ・タルティーニによる『悪魔のトリル』（Il trillo del diavolo）は、バロック期を代表するヴァイオリンソナタであり、その革新性と技術的な難しさから、今日でも多くの演奏者に愛され続けています。この作品は、タルティーニが夢の中で悪魔が奏でるヴァイオリンの音楽に感動し、目覚めた瞬間にそのメロディを記録したという伝説から「悪魔のトリル」というタイトルが付けられました。

作曲の背景

この楽曲は1713年頃に作曲されたとされていましたが、近年の研究では1740年代後半に完成した可能性が高いと考えられています。タルティーニの作品の中でも特に有名であり、バロック音楽の特徴を持ちながらも、現代の演奏技術をもってしても演奏は非常に難しいものとなっています。そのため、ヴァイオリニストにとっては避けては通れないレパートリーの一つとなっています。

楽曲構成

このソナタは3つの楽章から構成されています。第1楽章は「Larghetto Affettuoso」で、12/8拍子のシチリアーノ風の哀愁を醸し出しています。二部形式で書かれ、ト短調から変ロ長調へと転調した後、再びト短調に戻るという典型的なバロック様式の調性変化が見られます。

次に、第2楽章「Allegro」では、2/4拍子の活気あるリズムが特徴で、同じく二部形式で構成されています。この楽章では、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番に見られるトリル手法が早くも採用されており、調性も前楽章と類似していますが、ニ短調やハ短調も現れます。第1楽章が歌謡的な雰囲気であるのに対し、第2楽章はより技巧的な要素が強調されています。

最後に第3楽章は「Grave-Allegro assai-Grave-Allegro assai-Grave-Allegro assai-Cadenza-Adagio」です。4/4拍子の緩やかな部分（Grave）と快活な部分（Allegro assai）が交互に演奏される構成になっており、その中には曲のタイトルにもなっている「悪魔のトリル」が登場します。約18小節にわたるこの部分は、全楽曲の中でも特に難易度が高く、二重音形式で書かれており、上声部がトリルを奏でている中で、独立した旋律が響き渡ります。

カデンツァは、モダンヴァイオリンによる演奏ではフリッツ・クライスラー版が一般的ですが、バロック・ヴァイオリンでは演奏者自身の即興やカデンツァの省略がしばしば行われます。楽曲の最後には、アダージョがあり、悲痛な叫びがヴァイオリンから発せられます。重厚な和音の進行とともに、劇的で悲劇的な結末が用意されており、聴衆に強烈な印象を与えます。

関連作品

『悪魔のトリル』は音楽作品だけでなく、さまざまな文化作品にも影響を与えてきました。たとえば、テレビドラマ『仮面ライダーBLACK』の第8話では、この曲にまつわる逸話が紹介されており、探偵ドラマ『探偵学園Q』でも登場人物の得意な曲としてこのソナタが言及されています。音楽の枠を超え、多方面での影響を持つ作品です。

外部リンク

• - ヴァイオリンソナタ ト短調『悪魔のトリル』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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