悪魔を倒す聖ミカエル

悪魔を倒す聖ミカエル

ラファエロ・サンティの絵画『悪魔を倒す聖ミカエル』は、イタリアの盛期ルネサンスを代表する作品で、1518年に完成しました。この作品には署名があり、年記も刻まれていますが、何度も修復された経歴があるため、ラファエロによる元の筆跡を明確に確認するのは難しくなっています。絵画のテーマは、大天使ミカエルが悪魔（サタン）を槍で突き、右足でその背中に立つ姿を描いています。これは、ラファエロが過去に手掛けた『聖ミカエルと竜』の発展版であり、彼特有の神聖さを呼び起こす力が感じられます。

歴史的背景

ラファエロが最初に聖ミカエルのテーマを扱ったのは、ウルビーノ公爵グイドバルド・ダ・モンテフェルトロの依頼によるもので、1504年または1505年に小品が完成されました。これは公爵の甥、フランチェスコ・マリア1世の聖ミカエル騎士団員資格を授与される際の感謝の意を表す作品と考えられています。また、教皇レオ10世のためにも、再度このテーマに取り組むことが依頼され、彼の甥ロレンツォ2世・デ・メディチによりフランソワ1世への贈り物として制作されたのです。この作品は1667年にルーヴル美術館に収蔵されています。

この絵画には、ラファエロに対する疑念も寄せられました。どの割合で弟子のジュリオ・ロマーノが手を加えたのかも議論されており、その色使いが彼の通常の技法とは異なる部分も存在します。オレンジや金色を用いた金属的な仕上がりがその一因であり、これはラファエロの表現とは異なる印象を与えます。こうした異なる技術は後のフランス古典主義の基礎とされ、皇室にも影響を及ぼしました。

様式と技法

『悪魔を倒す聖ミカエル』は、若々しいミカエルが岩だらけの風景の中で槍を持ちながら悪魔を打ちのめす姿を描いています。彼の翼は広がり、悪魔の翼は閉じていますが、これは敗北の象徴とされています。ラファエロは、登場人物を優雅かつ控えめに描くことに秀でており、動きの感覚を生み出す技術も備えています。ミカエルの姿を通して、「主人」としての人間の存在が意味づけられており、対照的に悪魔は従属的に描かれます。

ラファエロはまた、彼の師であるピエトロ・ペルジーノから多くのスタイルを継承し、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けつつも独自の表現を追求したことが伺えます。ミカエルが槍を構えた姿や、その視線が悪魔を捉えている瞬間、そして背景の自然描写は、ラファエロがいかに人間と自然の調和を描こうとしたかを物語っています。

受容と影響

この作品は、1667年にフランス王立絵画彫刻アカデミーでの重要な授業の題材に選ばれ、聖ミカエルの筋肉の描写についての議論が行われました。抽象的な構図や色の使われ方、動きの印象は教育の中で重要視され、フランス古典主義の形成に寄与しました。美術史家によれば、ラファエロの色使いと構成は、彼の作品の中で非常に高い評価を受けており、他の芸術家たちに基準として見られることもあります。

ラファエロについて

ラファエロは1483年にウルビーノで生まれ、フィレンツェでの学びを通じて独自のスタイルを確立しました。彼は37歳で亡くなるまでの間、教皇ユリウス2世や当時のエリートと強い結びつきを持ち、名声を得ました。ラファエロの作品は、人々を感動させる力を持ち、信仰や神秘をたたえた美しい姿を描くことに成功しました。本作『悪魔を倒す聖ミカエル』は、キリスト教の信仰に対する重要な象徴として、今も人々の心に深く根付いています。

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