悼平皇后

悼平皇后（とうへいこうごう）

悼平皇后（? - 1149年）は、金の第3代皇帝である熙宗（きそう）の皇后です。女真（じょしん）貴族、婆盧買（ばろばい）部の裴満（はいまん）氏の出身で、父は裴満忽撻（はいまん こつたつ）、母は金の宗室の娘という血筋でした。太祖の妻であり、遼王斡本（宗幹）の母である光懿皇后と同族にあたります。

生涯

熙宗の即位後、裴満氏は貴妃となり、天眷元年（1138年）には皇后に立てられました。熙宗からの寵愛は非常に厚く、英悼太子（えいとうたいし）済安（さいあん）を産みますが、済安は夭折してしまいます。

金の重臣であった粘没喝（宗翰）（ねんもかつ、宗翰）や斡啜（宗弼）（あつてつ、宗弼）らが亡くなると、皇后は政治に深く関与するようになります。宰相の人事を左右したり、熙宗に対して不遜な態度を取ることもあったと伝えられています。その権勢にあやかろうと、皇后へ様々な献上物が贈られ、珍しいものを献上した地方官は昇進したそうです。近侍の高寿星（こうじゅせい）が熙宗の命で燕南（えんなん）へ移送されそうになった際、皇后に訴えたところ、皇后は左司郎中の三合を殺害、平章政事の乙卒（秉徳）を鞭打ち、高寿星の異動を阻止しました。

また、斡本（オベン、宗幹）の子である完顔亮（海陵王）（わんやん りょう、海陵王）と親密な関係にあったとも噂されています。これらの出来事が重なり、皇后は次第に熙宗の信頼を失い、他の妃嬪が寵愛を受けるようになります。皇統9年（1149年）11月5日、皇后は熙宗と口論となり、熙宗は激怒して皇后を殺害してしまいました。

皇后の死後、翌月には海陵王によって熙宗自身も弑逆（しいぎゃく）され、東昏王（とうこんおう）に格下げされた上で葬られます。しかし、裴満氏には「悼皇后」という諡（おくりな）が贈られ、父の裴満忽撻は郡王の位を授けられました。大定元年（1161年）、海陵王を廃して即位した世宗（せいそう）によって、裴満氏は「悼平」と諡を改められ、熙宗と共に合葬されました。

子女

英悼太子 済安（1142年 - 1143年）
代国公主 - 唐括弁（とうかつ べん）に降嫁

伝記資料

『金史』
『三朝北盟会編』
『靖康稗史箋證』

参考文献

梅村坦「第2部 中央ユーラシアのエネルギー」『世界の歴史7 宋と中央ユーラシア』中央公論新社〈中公文庫〉、2008年6月。ISBN 978-4-12-204997-0。
* 佐伯富 著「金国の侵入/宋の南渡」、宮崎市定 編『世界の歴史6 宋と元』中央公論社〈中公文庫〉、1975年1月。

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