情島 (広島県)

情島の概要

情島（なさけじま）は、瀬戸内海の芸予諸島にて存在する有人の島です。本州の広島県呉市から南へ約8キロメートル、倉橋島の東に位置しています。この島の西隣には小情島という無人島があり、情島は倉橋島とは音戸大橋で直接結ばれてはいないため、離島とされています。全域は呉市阿賀町に属し、面積は0.69平方キロメートル、周囲は4.5キロメートルです。2010年度のデータによると、島の約80%は山地で、最高峰は高山（126メートル）です。島の西側はほぼ断崖であり、集落は一つだけ、東側には数か所の砂浜があります。島の地質は主に花崗岩で、気候は典型的な瀬戸内海式気候です。

島の人口は2010年時点で6世帯9人であり、高齢化率は88.9%に達しています。この地形の制約から、将来的には人口の増加が望めず、集落の維持が困難になることが懸念されています。また、上水道は整備されておらず、住民は井戸から水を汲み上げています。携帯電話は通じるものの、他の通信インフラは整備されていません。周囲は小型の底引き網漁の場であり、島の住民は半農半漁の生活を営んでいます。しかし、漁業従事者はたったの1人で、農家は3世帯ほどですが、主に自給のためのものであり、大規模な商業活動は行われていません。

資源と歴史

情島の名前の由来には伝承があります。イチキシマヒメが宮島へ向かう途中、情島住民が彼女を助けたというエピソードが伝えられています。また、島の南には古墳時代後期の円墳である“情島古墳”が存在し、横穴式石室が特徴です。その周辺には“火の釜”という狼煙台の跡も見つかっており、海賊の拠点だったという伝説があります。

江戸時代には、広島藩がこの島に放牧場を設け、阿賀の農民を移住させて管理させました。明治時代以降、島は徐々に行政区分が変わり、1978年に阿賀村、1897年には阿賀町、1928年には呉市に編入されました。人口は明治初期で約40人、松本勝太郎が材木切り出しのため島の半分以上を買収し、別荘を建てたのがこの時期のことです。昭和初期には人口が約140人に増え、柑橘栽培も行われていました。

戦争の影響

しかし、太平洋戦争中、島は「海軍さんの島」として日本海軍によって接収され、秘密訓練の場となりました。戦争末期には、日向という浮砲台が近海に置かれ、その結果大規模な空襲を受けて、多くの犠牲者が出ました。戦後、島には元の住民が戻り、1947年には207人にまで人口が増えましたが、その後は減少の一途をたどっています。

七不思議

情島には独自の「七不思議」（または七名所）があり、地域の文化や民話を豊かに伝えています。その中には、鯛の巣や夫婦岩、火の釜の窟、潜り岩、狗賓松などが含まれ、地域の人々に親しまれています。

交通

情島へは、阿賀港からの定期旅客船が運行されており、所要時間は約25分で、1日3往復しています。運賃は片道210円ですが、港近くには駐車場がないため、事前にアクセス方法を確認しておくことが大切です。

もう一度検索