想い出のサンフランシスコ

想い出のサンフランシスコ：時代を超えて愛される名曲

「想い出のサンフランシスコ」（I Left My Heart in San Francisco）は、1953年にジョージ・コウリーとダグラス・クロスによって作られた楽曲です。トニー・ベネットが歌い、彼の代表作として世界中で愛されています。この曲は、サンフランシスコ市によって公式な賛歌の一つとして認められています。

誕生の背景

作曲はジョージ・コウリー、作詞はダグラス・クロスが手掛けました。ニューヨークに移り住んだ二人が、故郷サンフランシスコへの郷愁を込めて作ったとされています。当初はクララメイ・ターナーのために作られましたが、彼女自身が録音することはなく、トニー・ベネットの手に渡りました。

ベネットにこの曲を紹介したのは、彼の長年の伴奏者であり、コウリー、クロス両名とも親交のあったラルフ・シャロンでした。ツアーでサンフランシスコのフェアモント・ホテルに向かう際、シャロンがベネットにこの曲を教えたと言われています。

興味深いエピソードとして、トニー・ベネットがこの曲を聴く前に、クララメイ・ターナーがテネシー・アーニー・フォードに歌わせようとしたものの、フォードが断ったという話が残っています。皮肉なことに、フォードは後にクロスの家族が所有していた大牧場を購入することになりました。

トニー・ベネットによる初披露と成功

1961年12月、サンフランシスコのフェアモント・ホテルのベネチアンルームで、トニー・ベネットはこの曲を初めて披露しました。当時サンフランシスコ市長だったジョージ・クリストファーや、後の市長ジョセフ・アリオートも聴衆の中にいました。1960年代から1980年代にかけて、ベネットは同地で繰り返しこの曲を歌い、サンフランシスコを代表する曲として定着させていきました。

1962年1月23日、ベネットはCBSのスタジオでこの曲を録音しました。当初はシングル「ワンス・アポン・ア・タイム」のB面としてリリースされましたが、A面が注目されなかったため、ラジオDJたちがB面の「想い出のサンフランシスコ」をかけるようになり、大ヒットにつながりました。1962年のポップチャートで19位にランクインし、最終的にはゴールドディスクを獲得。さらに、グラミー賞では最優秀レコード賞と最優秀男性ソロ・ボーカル賞を受賞しました。2001年には、「世紀の歌」の23位に選ばれています。

さまざまな場面での演奏

この曲は、コンサートだけでなく、特別なイベントでも演奏されています。

1970年、NFLのNFCチャンピオンシップゲーム（サンフランシスコ・49ers対ダラス・カウボーイズ）
1987年、ゴールデンゲートブリッジ開通50周年記念式典
1989年、ロマ・プリータ地震で損傷したサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジの再開通時
MLBのサンフランシスコ・ジャイアンツの試合
2002年ワールドシリーズ第3戦
2010年ワールドシリーズ第1戦
* 2012年ワールドシリーズ優勝パレード

ジャイアンツが勝利した際には、本拠地AT&Tパークで必ずこの曲が流れます。また、ECHLのサンフランシスコ・ブルズの試合でも、勝敗に関わらず演奏されていました。

トニー・ベネットの想い

ベネットは、この曲について次のように語っています。「この曲のおかげで私は世界市民となれた。この曲のおかげで、世界中どこに行っても働いて歌うことが可能となった。この曲のおかげで私は生きていくことができたのだ。この曲は私の人生すべてを変えてしまった」

2000年代以降のベネットのコンサートでは、この曲はクライマックスに向けて演奏され、観客からの盛大な拍手の中で照明が当てられる演出が定番となっていました。

カバーバージョン

「想い出のサンフランシスコ」は、数多くのアーティストによってカバーされています。フランク・シナトラ、ジュリー・ロンドン、ブレンダ・リー、アニタ・ブライアント、ジャン&ディーン、テレサ・ブリュワー、ペギー・リー、ディーン・マーティン、ミーナ・マッツィーニなどがその例です。日本でも江利チエミがカバーしています。

1969年には、ボビー・ウーマックがリズム・アンド・ブルース版をリリースし、R&Bチャートで48位を記録しました。同年、サンフランシスコ市は、この曲を正式な市の賛歌として採用しました。

「想い出のサンフランシスコ」は、時代を超えて愛される、サンフランシスコの象徴的な歌として、これからも人々の心に響き続けるでしょう。

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