愛と野望のナイル

概要

『愛と野望のナイル』（原題：Mountains of the Moon）は、1990年にアメリカで制作された歴史ドラマ映画です。19世紀半ば、まだ知られざるアフリカ大陸の奥深くに眠るナイル川の源流発見に挑んだ二人の実在のイギリス人探検家、リチャード・フランシス・バートンとジョン・ハニング・スピークの波乱に満ちた物語を描いています。彼らの探検における過酷な道のり、探求心、そして名声と真実を巡る友情と対立が、壮大なスケールで描かれます。

あらすじ

1850年代、世界各地への影響力拡大を目指していた大英帝国は、アフリカ大陸最深部に位置するナイル川の源流発見に多額の報奨金をかけていました。探検家たちの熱狂が高まる中、1854年、ソマリアでのナイル探検隊に、すでに探検家として名を知られていたリチャード・フランシス・バートンと、探検家を志す若い軍人ジョン・ハニング・スピークが参加します。この最初の探検は、現地部族からの襲撃に遭い、二人とも深刻な傷を負うという結果に終わりますが、過酷な体験を通してバートンとスピークの間には強い友情が芽生えました。

3年後の1857年、二人は再びナイルの源流探査に挑むため、協力してアフリカへの旅に出ます。彼らはタンガニーカ湖を発見した後も、病気や飢餓、過酷な自然環境や野生動物、そして現地の人々との軋轢など、数々の試練に直面しながら前進を続けます。熱病に苦しむバートンを残し、単身前進したスピークは、ついにナイルの源流と考えられる広大な湖を発見し、女王に敬意を表してヴィクトリア湖と命名します。しかし、重要な測量機器を失っていたこと、そして湖を周回してその流出口を確認できなかったスピークの報告に対し、慎重なバートンはヴィクトリア湖が確実に源流であるとは断言できないと指摘します。

静養のため遅れて帰国するバートンに先立ち、ロンドンへ戻ったスピークは、彼の報告を聞いた従弟から、王立地理学協会での調査結果発表を強く勧められます。バートンとの共同発表を約束していたスピークは当初ためらいますが、従弟はバートンが自身の報告書の中で、ソマリアでのスピークの行動を臆病であるかのように記述していると、事実と異なる情報を吹き込みます。この誤情報に激高したスピークは、バートンに無断で単独での報告を行い、まるで自身の功績であるかのように発表してしまうのです。これによりナイル源流探査の主導権を握ったスピークですが、ヴィクトリア湖の決定的な証拠となる流出口発見には至らず、調査は難航します。

一方、協会からは冷遇されていたバートンは、献身的な妻イザベルと穏やかな日々を過ごしていました。しかし、スピークの裏切りに憤るイザベルに強く促されたバートンは、著名な探検家リビングストンらの後押しもあり、ヴィクトリア湖がナイル源流であるか否かを巡り、王立地理学協会でスピークとの公開討論会に臨むことを決意します。討論会を前に、スピークは従弟による偽りの情報のせいで関係が悪化した事実を知り、激しく動揺します。運命の皮肉か、討論会前日、狩猟中の事故により銃が暴発し、スピークは突然の死を遂げます。壇上でその訃報を聞いたバートンは深い衝撃を受け、言葉を失い立ち尽くすのでした。探検家としての再起の機会を失ったバートンは、新たな任地へ外交官として旅立つ準備を進めます。

やがて、スピークの記念胸像制作を依頼された彫刻家が訪れ、在りし日の彼の姿について意見を求められます。そこでバートンは、今は亡き友のデスマスクと対面します。それは、栄光と悲劇に彩られた二人の友情の、あまりにも切ない幕引きでした。

キャスト

主なキャストは以下の通りです。

リチャード・フランシス・バートン：パトリック・バーギン（吹替：津嘉山正種）
ジョン・ハニング・スピーク：イアン・グレン（吹替：安原義人）
イザベル・アルンデル：フィオナ・ショウ（吹替：山田栄子）
ローレンス・オリファント：リチャード・E・グラント（吹替：小川真司）
ホートン卿：ピーター・ヴォーン（吹替：宮内幸平）
マブルーキ：デルロイ・リンドー（吹替：池田勝）
マーチソン卿：ジョン・サヴィデント（吹替：宮川洋一）
オリファント卿：ジェームズ・ヴィリアーズ（吹替：大宮悌二）
エドガー・パプワース：ロジャー・リース
デイヴィッド・リヴィングストン：バーナード・ヒル

この作品は、1992年2月23日にテレビ朝日「日曜洋画劇場」でも放映されました。

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