愛の支配

「愛の支配」（Love, Reign o'er Me）は、ザ・フーのアルバム『四重人格』（1973年）に収録された楽曲で、ピート・タウンゼントによって作詞・作曲されました。

楽曲解説

この曲は、元々未完に終わったロック・オペラ『ロック・イズ・デッド～不死身のハードロック』のために制作されたもので、『四重人格』では物語のクライマックスを飾るバラードとして位置づけられています。

『四重人格』は、4つの人格を持つモッズの青年ジミーの物語。彼は自身のアイデンティティに悩み、苦悩の末に自殺を考えます。しかし、小舟で海に漕ぎ出し、ある場所で自分が本当に求めていたものを見つけます。この曲のタイトルにある「Love reign o'er me（愛が俺を支配する）」というフレーズは、ジミーがばらばらだった人格を統合する際の苦痛と歓喜の叫びを表現していると、タウンゼントは語っています。物語の結末については明示されておらず、ジミーの運命は彼自身に委ねられています。

アメリカではシングルカットもされ、Billboard Hot 100で76位を記録しました。シングルバージョンは、アルバムバージョンに比べて前奏と終奏が短縮されています。

映画『さらば青春の光』での使用

『四重人格』を原作とした映画『さらば青春の光』（1979年）では、ブライトンの乱闘後、全てを失ったジミーが思い出の地を彷徨うシーンで「愛の支配」が使用されました。サウンドトラック盤に収録された楽曲は、音楽監督を務めたジョン・エントウィッスルによってリミックスされ、ベース・ギターのパートが再録音されています。さらに、フルート、金管楽器、ストリングスが加えられ、終奏もアルバム収録版とは異なるアレンジが施されています。

コンサートでの演奏

「愛の支配」は、『四重人格』発表後の1973年から1974年のツアーで毎回演奏されました。その後、1982年のフェアウェル・ツアー、1985年のライヴ・エイド、1989年の結成25周年記念ツアーでも披露され、重要なレパートリーとして演奏され続けています。これらのライブ音源は、公式ライブ・アルバム『フーズ・ラスト』（1984年）と『ジョイン・トゥゲザー』（1989年）に収録されています。

カバーバージョン

パール・ジャムが2007年にこの曲をカバーし、デジタル配信シングルとしてリリースしました。このバージョンは、Billboardのメインストリームロックチャートで32位を記録し、アメリカ映画『再会の街で』（2007年）で使用されました。

「愛の支配」は、ザ・フーの代表曲の一つとして、現在も多くの人々に愛され続けています。その力強いメロディと深い歌詞は、聴く者の心を揺さぶり、様々な解釈を許容する普遍的な魅力を持っています。

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