愛・命 〜新宿歌舞伎町駆け込み寺〜

テレビ朝日系列で2011年12月17日に放送された単発スペシャルドラマが、『愛・命 〜新宿歌舞伎町駆け込み寺〜』です。この作品は、平均視聴率11.3％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）を記録しました。

概要

本作は、東京・新宿歌舞伎町で、様々な人生の苦悩を抱える人々を支援し続けてきた実在の人物、玄秀盛氏の半生をモチーフにしています。物語は、玄氏をモデルとした主人公の姿を、架空のフリージャーナリストの視点を通して描くという構成をとっています。玄秀盛氏を題材としたドラマとしては、2006年にフジテレビ系列で放送された作品に続く2作目となります。

このドラマは、主演の渡辺謙氏が「愛、そして命」という、時代を超えて人間が見失ってはならない普遍的なテーマを追求したいという思いから、自ら企画しました。渡辺氏は、監督として自身が出演したドラマで組んだ経験のある石橋冠氏を、また相手役には永作博美氏を指名しました。さらに、渡辺氏の実際の妻である南果歩氏も出演しており、石橋監督作品への出演を熱望していた南氏が、渡辺氏演じる主人公の別居中の妻役を演じることとなり、二人は結婚後初めて夫婦として共演したことでも話題を呼びました。

あらすじ

物語は2001年秋から始まります。主人公・平山秀盛は、将来的に白血病を発症する可能性のあるウイルスに感染していることを知らされ、人生の大きな転換点を迎えます。ある日、フリーマーケット会場で聖母子の絵に強く心を惹かれた平山は、その絵を販売していたフリージャーナリストの中原洋子と出会います。洋子は平山の瞳に宿る、悲しみとも怒りともとれる複雑な感情に目を奪われ、思わずシャッターを切りますが、後に絵の代金に挟まれた一枚の紙から、彼がウイルスの抗体検査で陽性であった事実を知り、衝撃を受けます。

それから一年後の夏、平山はウイルス感染を契機に、かつての傍若無人で金銭至上主義的な生活を改め、「せめて死ぬまでに誰かの役に立ちたい」という強い決意のもと、新宿歌舞伎町にNPO法人「日本ソーシャル・マイノリティ協会」、通称「歌舞伎町駆け込み寺」を設立し、困難な状況にある人々の支援活動を始めていました。そんな折、平山は歌舞伎町で偶然洋子と再会します。当初は平山のことを覚えていなかった洋子ですが、後に一年前の出来事を思い出し、平山の活動拠点を探し当てて、彼のドキュメンタリーを撮影したいと申し出ます。平山も「駆け込み寺」の活動を知ってもらう良い機会になると考え、その申し出を快諾します。特ダネに恵まれず取材対象を探していた洋子でしたが、自身の重い過去と向き合いながらも、他者のために心血を注ぐ平山の存在に触れるうち、ジャーナリストとしての情熱が再び燃え上がります。そして、平山は彼女にとって、単なる取材対象という枠を超え、特別な存在へと変わっていくのでした。

キャスト

平山 秀盛（玄 秀盛）役：渡辺謙
在日韓国人の両親のもとに生まれ、幼少期は貧困と複雑な家庭環境で育ちます。建設業や裏社会に関わる仕事を経て、ウイルス感染を機に人生を一変させ、虐待や借金など様々な問題を抱える人々を救うため、NPO法人を立ち上げます。
中原 洋子 役：永作博美
かつてアフガニスタンなどの戦場で危険な取材も経験したフリージャーナリストでしたが、私生活での挫折を経て帰国し、生きる目的を見失っていました。平山秀盛との出会いと彼の生き様への取材を通して、ジャーナリストとしての情熱を取り戻し、自己と向き合うようになります。
平山 安枝 役：南果歩
秀盛の妻ですが、夫の事業の失敗による借金が原因で別居しています。神戸で二人の子供を女手一つで育てながら、家庭を守っています。内心では夫のことを案じています。
徳永 たま 役：風吹ジュン
家出した娘を探しに上京し、駆け込み寺を訪れて秀盛と出会います。娘は無事に見つかりますが、その後も駆け込み寺のボランティアとして活動を続けます。
村松 ケンジ 役：緒形直人
洋子の数少ない友人であり、良き理解者です。洋子に密かに好意を寄せ、向こう見ずな彼女をいつも心配しています。実家は気仙沼で造り酒屋を営んでおり、後に洋子と結婚し、一女をもうけます。
高村 政枝 役：かたせ梨乃
資産家で有名な占い師。平山秀盛の活動に共感し、金銭的な援助を行うなど、ある意味で彼の理解者でもあります。
* その他
秀盛の実母・金美淑を市毛良枝、実父・玄新一を山本學が演じたほか、亀田警部補役の伊武雅刀など、多数の実力派俳優が出演し、物語に深みを与えています。

スタッフ

本作は、一般社団法人 日本駆け込み寺の協力のもと、玄秀盛氏の原案を基に、竹山洋氏が脚本を手がけました。監督は石橋冠氏、音楽は吉川清之氏が担当しています。制作協力は5年D組、制作著作はテレビ朝日が行いました。

このドラマは、現代社会が抱える様々な問題と、それに立ち向かう一人の人間の壮絶な生き様を、「愛」と「命」というテーマを通して深く問いかける作品として、多くの視聴者に感動を与えました。

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