愛知厚生年金会館

愛知厚生年金会館の歴史

愛知厚生年金会館は、愛知県名古屋市千種区に位置していた厚生年金保険の加入者を対象とした福祉施設であり、全国に同様の施設が存在しました。通称「ウェルシティなごや」として親しまれていました。この施設は、社会保険庁が設立したもので、福祉の向上を目指していました。

概要と開館

1960年（昭和35年）、名古屋市中区のかつての愛知淑徳中学校・高等学校の校舎跡地に設立されました。開設当初から、利用者に多彩なサービスを提供し、1980年にはこけら落としが行われました。建物は鉄筋コンクリート造の地上7階、地下1階建てで、宿泊施設、宴会場、さらには1,666名収容可能な多目的ホールが併設されていました。この多目的ホールは、さまざまな文化イベントやコンサートに使用されるなど、市民に広く利用されました。

年間の利用者数は30万人を超え、施設全体では年間60万人以上が訪れ、開館以来黒字経営が続いていました。

売却と閉館

しかし、2005年（平成17年）には公的年金の流用問題の影響を受け、厚生年金会館が民間に売却されることが決定しました。愛知厚生年金会館も同様に、社会保険庁から独立行政法人に保有権が移管されました。2008年に行われた競争入札では、積水ハウスと長谷工コーポレーションの共同企業体が約65億円で落札しました。これにより、同年10月31日には年金福祉施設としての運営が終了し、12月1日に所有権が移転しました。

閉館後、多目的ホールの存続を求める声が多数ありました。特に名古屋市民会館中ホールや名古屋市公会堂といった他の公共ホールが少なかったため、地域住民たちは「愛知厚生年金会館の存続を願う会」や「存続を考える会」を立ち上げ、約17万人からの署名を集めて存続を訴えました。しかし名古屋市は積極的な支援を行わず、固定資産税の減免のみを表明しました。

再開発と影響

落札した企業は、会館の取り壊しを決定し、その跡地には地上42階建ての分譲マンション「グランドメゾン池下ザ・タワー」が建設されました。このプロジェクトは2011年末から販売が開始され、その後も新たなマンションが計画されていました。その影響で、地元商店街は来客数の減少に直面し、閉店を余儀なくされる店舗も出てきました。

また、ホール内に展示されていた緞帳「木曽川ライン下り」の原画は、地元の実業家によって引き受けられ、新たに建設された「サクラサク美術館」に一時展示された後、商業施設へと転換されてしまいました。

施設概要

愛知厚生年金会館は、名古屋市営地下鉄東山線・池下駅から近い位置にあり、宿泊定数103名と89室の宿泊施設を備えていました。大ホールの収容人数は1,666名で、地域において重要な文化・福祉の拠点として機能していましたが、その歴史は幕を閉じ、新たな時代へと移行しています。

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