感情表出

感情表出（Expressed Emotion: EE）とは

感情表出（EE）とは、精神疾患を抱えるクライアントの家族が、クライアントについて日常的にどのように話すかという視点から家庭環境を評価する指標です。この概念は、単なる感情の表出だけでなく、家族関係の質やコミュニケーションのパターンを捉えることを目的としています。

EEの構成要素

EEは、主に以下の3つの側面から評価されます。

批判的な発言（Critical Comments）: クライアントに対する否定的な評価や批判。
敵意（Hostility）: クライアントに対する怒りや不快感の表出。
過度の感情的な巻き込まれ（Emotional Over-involvement）: クライアントの行動や感情に過剰に反応し、過保護になったり、干渉したりする状態。

これらの要素に加えて、肯定性や温かさは、EEが低い環境を示す指標とされます。

EEと精神疾患

家庭内のEEが高い（high EE）状態は、統合失調症や社会不安障害などの精神疾患を持つクライアントの予後を悪化させる可能性が指摘されています。また、精神疾患の発症リスクを高める要因にもなると考えられています。

具体的には、高EEの家庭環境は、以下の疾患の再発リスクを高めることが研究で示されています。

統合失調症
摂食障害
気分障害

さらに、うつ病、双極性障害、認知症、糖尿病といった疾患の進行にも関連があるとされています。

EEのメカニズム

高EEの環境が精神疾患の悪化や発症に関わるメカニズムとして、以下の点が考えられています。

批判的なコメント: 患者の行動が症状ではなく、怠惰や自己中心性によるものと誤解される。
過保護: 患者の自立心や、問題解決能力を損なう。
心理的ストレス: 高EEの言動が心理的なストレスとなり、精神疾患を悪化させる（素因-ストレスモデル）。

EEの測定方法

EEは、以下の方法で測定されます。

キャンバーウェル家族評価尺度（CFI）: 録音された家族インタビューを通じて、質問への回答や非言語的な行動を分析し、強い感情表現の有無を判断します。
クライアントの認識: クライアント自身が、家族が自分や自分の疾患についてどう感じているかを評価します。
5分間スピーチサンプル（FMSS）: 家族にクライアントについて5分間話してもらい、その内容を分析します。この方法はCFIよりも短時間で実施できますが、訓練が必要です。

治療への応用

高EEの家庭環境を改善するための治療として、以下の取り組みが有効です。

高EEの家族や介助者との接触を減らす。
家族や介助者に対して、高EEの行動を減らすための教育と支援を行う。

まとめ

感情表出（EE）は、家族環境が精神疾患に与える影響を理解する上で重要な概念です。高EEの家庭環境は、精神疾患の悪化や再発のリスクを高めるため、適切な介入が必要です。EEの概念を理解し、家族関係の質を改善することは、精神疾患を持つクライアントの回復を促進する上で不可欠です。

参考文献

Vaughn, Christine; Leff, Julian P. (1985). Expressed emotion in families: its significance for mental illness. New York: Guilford Press.
Hooley JM (2007). “Expressed emotion and relapse of psychopathology”. Annu Rev Clin Psychol 3: 329–52.

外部リンク

* http://www.personalityresearch.org/papers/mcdonagh.html

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