憲法 (芦部信喜)

書籍『憲法』の概要と評価

『憲法』（けんぽう）は、岩波書店から1993年に初版が発行された芦部信喜による憲法学の基本書です。2023年には第8版が出版され、長年にわたり憲法を学ぶ学生や研究者に愛読されています。初版の基となったのは、1985年に放送大学で開講された「国家と法（1）」という科目の教科書です。この際、芦部の門下生である戸波江二が執筆を手伝ったものの、彼の独自の理論は含まれていないとされています。

芦部は憲法学の一流の専門家として、宮沢俊義の後を受け継ぐ形で学界に影響力を持ち続けています。本書では、特に日本国憲法第13条に基づく個人の尊重原理を重視し、基本的人権が近代立憲主義の基盤となると考えています。そのため、著者は人権についてまず詳述し、それを実現するための統治機構について解説するというスタイルを採用しています。このような構成は京都学派憲法学の影響を受けた事例もありますが、現在では一般的な形態となっています。

1997年と1999年には改訂版が出され、1999年には補訂版が発行されました。著者が同年に亡くなるも、需要は続き、2002年以降は高橋和之が編集を手がけた第3版以降が発行されています。この過程で最新の判例や立法が追加され、内容が更新されています。2016年には発行部数が100万部を突破したと報告されています。

評価と批判

本書は、学界で「憲法教科書の定番中の定番」と評されるなど高く評価されていますが、内容のコンパクトさが指摘されることもあります。省略されがちな部分があるため、憲法の全体像を把握するには他の参考文献が必要となります。特に、芦部が生前に連載していた『法学教室』の「憲法講義ノート」は、憲法全体の体系を詳しく解説することが期待されていたものの、著者の死によりその完成を見ることはありませんでした。これに関連して、芦部の遺作や他の専門家が書いた参考著書を併せて読むことが推奨されています。

関連書籍

本書と併せて参考になる文献には、芦部信喜の『憲法学I・II・III』や『憲法判例を読む』、高見勝利の『芦部憲法学を読む――統治機構論』、また基本的立場が一致する学者の著書などがあります。

これにより、憲法学を深く理解し、学ぶための基盤を築くことができるでしょう。卒業生や研究者が本書を用いる際には、様々な資料とともに学びを進めることが望まれます。

もう一度検索