成唯識論

成唯識論について

成唯識論（じょうゆいしきろん、梵: Vijñapti-mātratā-siddhi）は、仏教における法相宗（唯識宗）の重要な論典であり、10巻から成り立っています。この書は、唯識の理解において中心的な役割を果たしており、その名称は「唯識による成就の論」を示しています。

成唯識論の基本概念

「ヴィジュニャプティ・マートラター」（vijñapti-mātratā）とは、「唯識」を指し、「シッディ」（悉地, siddhi）は「成就」という意味合いを持っています。これにより、本書は、唯識によって達成される悟りについて論じていることが分かります。成唯識論は、世親が著した『唯識三十頌』への護法の注釈が基盤となっており、中国の唐代には玄奘がこの思想を漢訳しました。

書の背景と影響

成唯識論は、唯識学の根本聖典として広く認識されています。特に、大乗基によって書かれた『成唯識論述記』は玄奘の言うことを記したもので、唯識学に関する重要な解説を提供しています。この書が日本にも早い段階で伝わり、以降、唯識の教学として長い間研究されています。「成唯識論」を基にした日本の研究は深く、近年も新しい訳解説が次々と発表されています。

代表的な文献

成唯識論に関連する文献も多数存在します。太田久紀による『成唯識論要講（全5巻）』は仏教書林中山書房から2000年に出版されており、法相宗の教えを深く理解するための参考となります。さらに、城福雅伸の『成唯識論 現代語訳・講義（全10巻予定）』も春秋社から2005年より刊行中で、これに沿った現代の解釈を提供しています。

他にも、竹村牧男の『「成唯識論」を読む（新興福寺仏教文化講座.7）』や、服部正明と上山春平による『認識と超越＜唯識＞ 仏教の思想.4』など、多様な視点からの研究が進められています。これらの文献は、成唯識論の理解を深めるための有用な資料となっています。

まとめ

成唯識論は、法相宗において特に重要な論典であり、唯識学の発展に寄与してきました。日本においても、この書の解説や研究は行われており、宗教的な意義はもちろんのこと、哲学的な視点からの解析においても高く評価されています。唯識の教えを学ぶ上で、成唯識論は欠かせない存在であり、現在においてもその価値は色あせていません。

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