竹村牧男

竹村牧男：仏教学者としての生涯と多様な活動

竹村牧男氏（1948年生まれ）は、日本の仏教学界において卓越した功績を残した学者です。唯識、禅、そして大乗仏教思想を専門とし、その深い洞察と幅広い知識は、多くの研究者や学生に影響を与え続けています。

東京大学文学部卒業後、同大学院でインド哲学を専攻。1993年には東京大学より文学博士号を取得し、その研究の深さが認められました。博士論文は『唯識思想論攷 -三性説の哲学的究明』で、唯識思想の核心に迫る内容となっています。

学究生活は、文化庁宗務課専門職員としての経験から始まります。その後、三重大学助教授、筑波大学教授を経て、2002年に筑波大学を定年退官、名誉教授となりました。その後、東洋大学文学部に転じ、2009年から2020年まで同大学学長を務め、大学の発展に大きく貢献しました。東洋大学退任後も、名誉教授として後進の育成に尽力し、2013年からは放送大学でも講師を務めています。

大乗仏教と部派仏教の差異

竹村氏は、大乗仏教と部派仏教（小乗仏教）の差異について独自の解釈を提示しています。部派仏教では修行の最終目標を阿羅漢の境地に置くのに対し、大乗仏教は最終的に仏となることを目指す、という点に注目しています。この解釈は、大乗仏教の目指す理想像を明確に示しており、仏教思想を理解する上で重要な視点を与えてくれます。

禅との深い関わり

東京大学在学中には、禅の道場に通い、秋月龍珉氏に師事しました。禅の修行を通じて得た経験は、氏の仏教思想研究に大きな影響を与えたことは間違いありません。「祖珉」という居士号を授かるなど、師弟関係の深さがうかがえます。

武道への造詣

学問のみならず、武道にも深い関心を持ち、実践しています。特に鹿島神流を熱心に修行しており、同じ唯識研究者である横山紘一氏と共に研鑽を積んでいます。この武道への取り組みは、精神修養の一環として、学問研究を支える重要な要素となっていると考えられます。

豊富な著作

数多くの著書を発表しており、その内容は多岐に渡ります。唯識思想を深く掘り下げた専門書から、禅や大乗仏教を分かりやすく解説した入門書、良寛や親鸞といった著名な仏教者の思想を論じたもの、さらには、西田幾多郎や鈴木大拙といった日本の思想家との関連性を探るものまで、実に多様なテーマを扱っています。これらの著作は、仏教思想研究の裾野を広げる役割を果たすと同時に、仏教をより身近に感じさせるものとなっています。代表的な著作には、『唯識の構造』『大乗仏教入門』『はじめての禅』『親鸞と一遍』などがあります。他にも翻訳、共著、共編著など、その著作活動は多岐に渡ります。

まとめ

竹村牧男氏は、仏教学者として、教育者として、そして思想家として、多方面で活躍されています。その活動は、仏教思想の研究・教育、大学運営、さらには武道にまで及び、その幅広さと深さは特筆ものです。日本の仏教界に多大な貢献を果たした氏の功績は、今後も高く評価され続けるでしょう。

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