成川遺跡

成川遺跡：南薩摩の複合遺跡

成川遺跡は、鹿児島県指宿市山川成川に位置し、縄文時代から古墳時代にかけての複合遺跡として知られています。特に弥生時代中期から古墳時代にかけての大規模な墓地遺構が発見されており、この地域独特の土器様式である「成川式土器」の標式遺跡として重要な意味を持っています。

遺跡の概要

遺跡は、薩摩半島南部の鹿児島湾（錦江湾）入口に位置する活火山「池田山川」の南東山麓に広がる舌状台地の南側斜面に位置しています。標高45〜55メートルほどの範囲で、約1.5ヘクタールの広がりを持っています。ここでは、弥生時代中期の板石を用いた祭祀遺構や、弥生時代後期から古墳時代中期にかけての大規模な墓地遺構が発見されました。現在、史跡指定はされていませんが、現地には発掘調査の概要を示す解説板と石碑が設置されています。また、遺跡の北東約4キロメートルには、国の史跡に指定されている橋牟礼川遺跡があります。

発掘調査の経緯

1957年（昭和32年）、山川湾埋め立てのための土砂採取中に台地斜面が切り崩され、42体分の人骨が出土したことがきっかけで、発掘調査が始まりました。翌1958年（昭和33年）の調査では、土壙墓2基に加え、この地域特有の立石土壙墓11基、233体分の人骨が出土しました。1980年〜1981年（昭和55年〜56年）の再調査では、土器や鉄器などを持つ弥生時代中期から古墳時代にかけての土壙墓141基、115体分の人骨が発見され、過去の調査と合わせて土壙墓は143基、人骨は390体分に及ぶことが判明しました。

出土遺物の特徴

これらの土壙墓（土器棺墓を含む）や人骨は、ほぼ東西方向に軸を置いて埋葬されているのが特徴です。鉄器類は多数出土していますが、個々の墓壙に副葬されることはなく、墓域全体に散在したり、墓前の地面に突き立てられたりする形で共献されています。また、蛇行剣や異形鉄器といった特異な遺物も発見されています。

成川式土器の重要性

出土した土器のうち、古墳時代のものは九州南部に広がる地域色の強い土器様式であることが判明し、「成川式土器」と命名されました。この成川式土器は、かつて弥生土器として認識されていたことがあり、縄文土器と弥生土器の時代差を初めて証明した橋牟礼川遺跡の発掘調査（1919年）で「弥生土器」として提示された土器資料が、実はすべて成川式土器であったという逸話も残っています。成川遺跡は、南薩摩における弥生時代から古墳時代にかけての文化や社会構造を理解する上で、非常に重要な遺跡と言えるでしょう。

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