我輩はカモである

『我輩はカモである』（わがはいはカモである、原題: Duck Soup）は、1933年に公開されたアメリカのコメディ映画です。この作品は、コミカルなスタイルで知られるマルクス兄弟が主演し、レオ・マッケリーが監督を務めました。本作は、パラマウント映画の下でリリースされたマルクス兄弟の最後の作品であり、末弟ゼッポ・マルクスの出演も最後となりました。さらに、1990年にはアメリカ議会図書館によって国家的に重要な映画として登録され、1998年にはアメリカ映画ベスト100の85位にランキングされるなど、その地位を確立しています。

ストーリー

物語は、財政難に陥ったフリードニア共和国を舞台に展開します。国の実力者であるティーズデール夫人は、国への援助を条件にルーファスを宰相に任命します。しかし、ルーファスの強引な手法は国に混乱をもたらし、状況はさらに悪化していきます。一方、隣国シルヴェニアの大使トレンティーノは、夫人に接近し彼女の信頼を得ようと画策し、スパイのチコリーニとピンキーを派遣します。ルーファスが二人を側近にすると、国はさらに混乱し、ついにシルヴェニアとの戦争に突入することになります。

キャスト

- ルーファス・T・ファイアフライ（演: グルーチョ・マルクス）: フリードニアの新首相。強烈なキャラクターを演じます。
- チコリーニ（演: チコ・マルクス）: シルヴェニアのスパイとして、陰謀を巡らす重要な存在。
- ピンキー（演: ハーポ・マルクス）: チコリーニの相棒であり、彼の行動を助ける無口なキャラクター。
- ボブ・ローランド（演: ゼッポ・マルクス）: ルーファスの秘書。
- グロリア・ティーズデール（演: マーガレット・デュモント）: 夫人として財政支援を行う役割を担う。
- トレンティーノ（演: ルイス・カルハーン）: シルヴェニアの大使で、国の乗っ取りを企てる主要な antagonists。
- ヴェラ・マーケル（演: ラクウェル・トレス）: 有名な踊り子で、トレンティーノと内通しています。

作品の評価

『我輩はカモである』は、ファシズムを風刺する明確なメッセージを持ち、数年後に登場するチャールズ・チャップリンの『独裁者』やルネ・クレールの『最後の億萬長者』に影響を与えました。撮影中、ハーポはヒトラーの演説がラジオから流れると不快を抱いたと語っています。また、イタリアではムッソリーニによって上映が禁止され、映画の影響力が政府に恐れられたことも示しています。

本作は政治的な要素が強い一方で、マルクス兄弟特有のナンセンスなギャグが散りばめられており、多くの新しいコメディアン、特に日本のクレージーキャッツやドリフターズに強い影響を与えました。特に、議会での「祖国は戦争に入れり」のシーンは、戦争による国家の狂乱を巧みに表現した名場面とされています。

しかし、この作品はリリース当初は観客からの反応が芳しくなく、批評家にも受け入れられなかったため、マルクス兄弟のキャリアに大きな影響を与えました。特にグルーチョはこの映画を「狂気が過ぎている」と評し、後に失敗作として扱われることになりました。

評価は時代とともに変化し、2012年の英エンパイア誌が選ぶ「最高のスラップスティックシーン16」には本作の名シーンも含まれており、再評価の流れが見られます。これらの評価を受けて、映画は様々なランキングに名を連ねるようになりました。最終的に『我輩はカモである』は、コメディ映画史において不朽の名作として位置づけられることとなりました。

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