戦慄の王女

クイーンのデビューアルバム『戦慄の王女』

『戦慄の王女』は、イギリスのロックバンド、クイーンが1973年に発表したデビューアルバムです。全英24位、全米83位を記録し、その後のクイーンの活躍を予感させる作品となりました。

タイトルについて

原題は「Queen」ですが、邦題では「女王」ではなく「王女」と訳されています。これは当時のレコード会社担当者が「雰囲気」で「女王」の使用を避けたためと言われています。このタイトルからも、このアルバムが持つ独特な雰囲気が感じられます。

アルバム制作の背景

1971年2月、ジョン・ディーコンが加入しメンバーが固定されたクイーンは、同年9月にデ・レーン・リー・スタジオでデモテープ制作の機会を得ます。ルイ・オースティンのプロデュースのもと、「炎のロックンロール」「グレイト・キング・ラット」などが録音されました。

その後、マネージメント会社トライデントと契約し、1972年夏頃からトライデント・スタジオで本格的なアルバム制作を開始。ジョン・アンソニーとロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースを担当しました。デヴィッド・ボウイやローリング・ストーンズも使用していたスタジオで、限られた時間の中、1973年1月までにアルバムは完成しました。

このアルバムに収録された楽曲は、「ザ・ナイト・カムズ・ダウン」を除き、全てトライデント・スタジオで録音されました。特徴的な多重録音コーラスやギター・オーケストレーション、クラシック音楽を基調としたメロディラインなど、クイーンのオリジナリティは既にこの時点で確立されていました。また、「...and nobody played synthesizer」という表記は、彼らのサウンドへの強い自負を表しています。緻密な音作りは、プロデューサーのベイカーの影響が大きいとされています。なお、ディーコンの名前が「ディーコン・ジョン」と表記されたのはメンバーの意図によるものですが、ディーコン本人の抗議により、次作『クイーンII』では「ジョン・ディーコン」に戻されました。

ジャケットデザイン

ジャケットデザインは、フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、そして写真家のダグラス・パディフットが担当しました。表ジャケットのバンドロゴはマーキュリーによるデザインです。ジャケットは基本的に全世界共通ですが、国によって色合いやロゴの位置が異なるものも存在しました。CD時代になってからはイギリス版のデザインに統一されています。

評価

イギリスでは、リリース当初はチャートインせず、次作『クイーンII』のヒットを受けて、1974年に47位に初ランクイン。1976年には最高位24位を記録しました。一方、アメリカではイギリスよりも早くチャートインしましたが、83位に留まりました。

当時のイギリスでは、複雑な曲構成や多用されたエフェクトが批評家から嫌われ、「こんなものが売れたら帽子でも何でも食ってやる」と酷評されることもありました。しかしアメリカでは概ね高評価を受け、ローリング・ストーン誌は「レッド・ツェッペリンが放棄したヘヴィメタルの王座を狙えるだけのツールがある」と賞賛。ウィニペグ・フリープレスも「イギリスのスーパースター候補」と絶賛しました。

メンバーの自己評価は低く、メイは「制作に時間がかかりすぎた」、テイラーは「ドラムの音が気に入らない」と語っています。

リイシュー

1994年にパーロフォンからデジタルリマスター版が、2001年には日本限定で24ビットデジタルリマスター版がリリースされました。2011年にはハリウッド・レコードから最新リマスター版が発表され、リミテッド・エディションには1971年のデモ音源が収録されました。

収録曲

リードボーカルはフレディ・マーキュリーが担当（特記除く）。

1. Keep Yourself Alive
2. Doing All Right
3. Great King Rat
4. My Fairy King
5. Liar
6. The Night Comes Down
7. Modern Times Rock 'n' Roll (リードボーカル：ロジャー・テイラー)
8. Son And Daughter
9. Jesus
10. Seven Seas Of Rhye (Instrumental)

パーソネル

フレディ・マーキュリー：ボーカル、ピアノ、ハモンドオルガン、アートワーク
ブライアン・メイ：ギター、ピアノ、アートワーク
ロジャー・テイラー：ドラムス、パーカッション、ボーカル
ジョン・ディーコン：エレクトリックベース

スタッフ

ジョン・アンソニー：プロデューサー
ロイ・トーマス・ベイカー：プロデューサー、レコーディング・エンジニア
マイク・ストーン、テッド・シャープ、デヴィッド・ヘンツェル、ルイス・オースティン：レコーディング・エンジニア
ジョン・ハリス：機材監督
ダグラス・パディフット：写真、アートワーク

外部リンク

Queen Lyrics

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