戦術航法装置

戦術航法装置（TACAN）の詳細

戦術航法装置（TACAN）は、航空機のために設計された電波航法システムであり、1955年にアメリカ軍によって導入されました。このシステムは、超短波全方向式無線標識（VOR）と距離測定装置（DME）の機能を組み合わせたものであり、航空機が目的地へ安全に到達するために重要な役割を果たしています。

TACANは極超短波（UHF）を利用することで、アンテナの小型化が可能になり、艦船や地上の車両にも無線測位局を設置できるため、幅広い用途で利用されています。艦船の場合、通常はマストの最上部に設置されることが一般的ですが、左右に設置することで測位精度をさらに高めることも可能です。

このシステムでは、方位の測定はパルス波によって行われ、航空機からの信号に対する応答によって距離も測定されます。方位測定機能は主に軍事用で利用されていますが、距離測定機能は民間航空にも活用されており、VORと組み合わせてVORTACとして使われることが一般的です。これにより、民間航空機も精度の高い方位と距離の情報をリアルタイムで得ることができます。

日本において、TACANは「タカン」と呼ばれ、電波法施行規則に基づいて定義されています。この法律では、タカンが960MHzから1,215MHzの周波数で電波を使用する無線航行業務を行う設備であることが明記されています。地上の設備は単独でも運用でき、VORと併設して無線航行陸上局としての機能も果たすことができます。また、航空機に搭載される機上設備は、他の通信機器と合わせて航空機局として免許が必要です。

自衛隊が保有する移動式の地上設備や搭載型の航空機については、特別の法律によって無線局の免許が免除されることがあります。地上に設置されるタカンの設備は、モールス信号で識別符号を発信し、特に民間の利用においては、TACN局には識別符号の3文字目に「T」が、VORTAC局には「C」が付与されます。識別符号の1文字目と2文字目はICAOの空港コードを基にすることが多いです。

また、タカンの周波数帯については、電波法施行規則に則って細かく定められており、規定に記載された数値を基に運用されています。これにより、航空機の安全でスムーズな運航を確保するための信頼性の高い航法支援が実現しています。

このように、戦術航法装置は現代の航空業界における基盤技術の一つであり、航空機の運行の安全性を高めるためには欠かせないシステムとなっています。将来的には、さらなる技術革新が進むことで、より高精度な航法が実現することが期待されています。

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