無線航行陸上局

無線航行陸上局とは

無線航行陸上局は、電波を利用して船舶や航空機などの移動体に位置情報を提供するための無線局の一種です。具体的には、地上から電波を発射し、その電波を受信した移動体が自身の位置を特定したり、位置に関する情報を取得したりするのを支援します。

定義

無線航行陸上局は、電波法関連の規則において以下のように定義されています。

無線航行局: 「無線航行業務を行う無線局」
無線航行: 「航行のための無線測位（障害物の探知を含む）」
無線測位: 「電波の伝搬特性を用いて行う位置の決定、または位置に関する情報の取得」
無線航行業務: 「無線航行のための無線測位業務」
海上無線航行業務: 「船舶のための無線航行業務」
航空無線航行業務: 「航空機のための無線航行業務」

これらの定義から、無線航行陸上局は「移動しない無線航行局」であり、陸上から電波を発射して船舶や航空機の航行を支援する役割を担っていることがわかります。

概要

無線航行陸上局は、無線測位局の一種であり、陸上に設置された固定の無線局です。その主な目的は、船舶や航空機に正確な位置情報を提供し、安全な航行をサポートすることです。これらの局は、航空運輸や国家行政（海上保安、航空保安など）において重要な役割を果たしています。

実際の用途

無線航行陸上局は、主に以下の用途で使用されています。

海上無線航行業務

ロランC: 長波帯の電波を利用した精密な測位システム
レーダー: 電波の反射を利用して周囲の状況を把握するシステム
国際VHF: 船舶間の通信や緊急通信に利用される無線システム
レーダービーコン: レーダー画面上に自船の位置を表示させるためのシステム
ディファレンシャルGPS: GPSの誤差を補正し、より高精度な測位を実現するシステム

航空無線航行業務

タカン: 航空機の方位と距離を測定するシステム
VORTAC: VOR（超短波全方向式無線標識）とTACAN（戦術航空航法装置）を組み合わせたシステム
VOR/DME: VORとDME（距離測定装置）を組み合わせたシステム
ILS: 計器着陸装置。滑走路への正確な進入を支援するシステム

これらのシステムは、船舶や航空機が安全に航行するために不可欠であり、それぞれの特性に応じて適切な周波数帯が割り当てられています。

周波数

海上無線航行業務:
ロランC: 90～110kHz
レーダー: 13.4～14GHz
国際VHF: 156～157.45MHz および 160.6～162.05MHz
レーダービーコン: 9200～9500MHz
ディファレンシャルGPS: 285～325kHz
航空無線航行業務:
VOR、ILSローカライザ、ILSグライドパス、MLS角度系、地上DME、地上タカン: 別表第2号の3に規定
ILSマーカービーコン: 75MHz
ATCRBS (航空交通管制レーダビーコンシステム): 1030MHz, 1090MHz

免許

無線航行陸上局の免許には、種別コード「RL」が割り当てられます。免許の有効期間は5年ですが、最初の免許については、有効期限が5年以内の一定の11月30日に設定されます。

運用

無線航行陸上局の運用については、以下の点が規定されています。

海上無線航行業務: 運用時間、位置などが告示により規定。
航空無線航行業務: 以前は告示で規定されていたが、現在は航空路誌で情報提供。
運用開始の届出: 電波法に基づき、運用開始前に届け出が必要。

操作

無線航行陸上局の操作には、専門的な知識と資格が必要です。陸上特殊無線技士では操作できず、海上系または航空系の無線従事者による管理（常駐ではなく）が必須となります。特に、航空機の航行安全に関わる無線設備の操作は、無線従事者でなければ行うことができません。

検査

無線航行陸上局は、設置後および定期的に検査を受ける必要があります。

落成検査: 国以外が設置する場合は、登録検査等事業者による点検が可能。
定期検査: 周期は1年。登録検査等事業者による点検が可能。
変更検査: 落成検査と同様。

歴史

無線航行陸上局は、1950年の電波法施行規則制定時に定義されました。その後、技術の進歩や社会の変化に合わせて、さまざまな変遷を遂げてきました。

1950年: 電波法施行規則制定時に定義
1963年: 海上・航空無線航行業務の電波の型式、周波数、運用が告示される
2020年: 航空無線航行業務の電波の型式、周波数、運用に関する告示が廃止

旧技術基準の機器の免許

無線設備の技術基準改正により、旧技術基準に基づく無線設備の免許には期限が設けられました。

旧技術基準機器の免許: 「平成29年11月30日」まで
旧技術基準機器の使用: 「平成34年11月30日」まで
旧技術基準機器とは: 「平成17年11月30日」までに製造された機器など

その他

無線標識局も無線航行陸上局と機能的に近い無線局として扱われています。

無線標識局: 「無線標識業務を行う無線航行局」

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