戦術高エネルギーレーザー

戦術高エネルギー[レーザー]システム：開発から廃棄まで

[イスラエル]]とアメリカ合衆国が共同で開発した戦術高エネルギーレーザー]は、地上から発射される[[ロケット弾や迫撃砲弾などの脅威に対処する革新的な対空防衛システムでした。1996年に始まったこの野心的なプロジェクトは、高出力レーザー技術を用いて、従来のミサイル迎撃システムに代わる費用対効果の高い解決策を目指していました。

THELの技術と目標

THELシステムの中核は、高エネルギーレーザーでした。このレーザーは、敵のミサイルや砲弾を正確に捕捉し、強力なレーザービームで破壊するというものでした。目標は、短距離から中距離への攻撃に対して、迅速かつ効率的な防御手段を提供することで、地上部隊の生存性を向上させることでした。1発あたりの迎撃コストが約3000ドルと低く抑えられることも、THELの大きな特徴でした。開発目標は、5kmの範囲内でほぼ100%の迎撃率、60回の射撃で再装填を完了することでした。

開発の遅延と課題

THELの開発は当初、1999年の初期作戦能力獲得を目指していましたが、移動式バージョン(MTHEL)への設計変更により、大きな遅延が発生しました。固定式の初期設計は、サイズ、重量、電力消費量において制約が多く、現代戦の機動性を重視した戦闘には適していませんでした。そこで、大型セミトレーラー3台分に収まる可搬性を目指したMTHELの開発に重点が移行しました。さらに、イスラエル政府による予算削減も開発を遅らせる要因となりました。

実験と成果、そして開発中止

2000年から2001年にかけて行われた実験では、THELは28発のカチューシャロケット弾と5発の砲弾を撃墜することに成功しました。MTHELもテストで良好な結果を示し、2004年には迫撃砲弾の一斉射撃に対しても迎撃能力を実証しました。しかし、これらの成果にも関わらず、2005年、アメリカとイスラエルはTHELの開発を中止しました。その理由は、システムのサイズとコストが大きすぎること、そして戦場での期待される成果が得られないことでした。

類似のレーザー兵器

THELの開発中止後も、レーザー兵器の研究開発は継続されており、レイセオン社などが、艦載型や車両搭載型のレーザー兵器を開発しています。レイセオン社のレーザー兵器は、高出力レーザービームを合成することで威力を高め、無人航空機や小型艦船、ロケット弾などの迎撃に用いられています。近年では、小型で機動性に優れたレーザー兵器システムも登場しており、ドローンの撃墜にも成功しています。米海軍のLaWS(Laser Weapon System)も、一照射あたりのコストが約1ドルと低コストで運用できる艦載型レーザー兵器として注目を集めています。

THELの登場作品

THELは、いくつかのSF作品にも登場しています。アニメ『OBSOLETE』では、手持ち式の改造版THELが登場し、エグゾフレームを装備したアメリカ海兵隊によって使用されます。小説『WORLD WAR Z』では、MTHELがゾンビ対策に使用される描写があります。

まとめ

THELプロジェクトは、レーザー兵器の実用化に向けた野心的な試みでしたが、技術的な課題やコスト、期待される成果とのずれから開発中止という結末を迎えました。しかし、このプロジェクトで得られた経験と技術は、後のレーザー兵器開発に貢献し、現在、より小型で効率的なレーザー兵器が実用化されつつあります。THELは、その成功と失敗を通じて、レーザー兵器開発の歴史における重要な一ページを刻んでいると言えるでしょう。

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