戦闘機無用論

戦闘機無用論

戦闘機無用論、または戦闘機不要論とは、航空技術の進化に伴い、従来の戦闘機の役割が見直される理論を指します。この理論は、必ずしも戦闘機自体が不要というわけではなく、戦術や技術的観点から戦闘機の重要性が疑問視されることに重点があります。

第二次世界大戦前後の背景

この議論は特に第二次世界大戦前後に注目されました。時代背景として、特に爆撃機の性能が向上し、戦略的役割が変わってきたことが影響しています。当時は防御中心の戦闘機が急速に発達する攻撃機に対して劣位に陥る傾向が見られました。この変化を受けて、航空理論に影響を与えた人物にはジュリオ・ドゥーエやヒュー・トレンチャードがいます。彼らは戦闘機よりも爆撃機の方が戦略的に重要であると主張しました。

日本海軍における無用論の発展

日本海軍における戦闘機無用論は、1933年頃から始まり、1935年、1936年にかけてピークを迎えました。この論は大本営や航空本部、さらには戦闘機搭乗員や攻撃機搭乗員から広く支持されました。支那事変の戦訓や零戦の登場によってこの流れは変わるのですが、一時的に戦闘機が軽視される状態が続きました。

無用論の根拠には以下の点が挙げられます。

• - 攻撃機の性能が向上し、高速な攻撃機に対する戦闘機の攻撃行動が困難になったこと。
• - 高速機への射撃が難しく、戦闘機の命中率が低下したこと。
• - 戦闘機の航続距離が短く、攻撃機を完全にサポートできなかったこと。
• - 爆撃機の火力の向上が、戦闘機の威力を相対的に低下させたこと。

具体的な演習でも、例えば1936年の模擬攻撃演習では、旧型戦闘機が攻撃機に追いつけずに完敗するといった結果が出ました。これが無用論を支持する材料となりました。戦闘機搭乗員の養成も減少し、特に1936年卒の搭乗員数は極端に少なくなりました。

大型機論との関係

また、大型機を重視する意見もあり、松永寿雄中佐や大西瀧治郎大佐らが提唱しました。彼らは、戦闘機よりも数々の攻撃機を艦載すべきと主張し、その根拠で高速機の存在や航続距離の短さを挙げました。特に、1937年の日中戦争では、戦闘機の価値が見直され、源田実少佐などが戦闘機を積極的に運用することが提案されました。

海外における戦闘機無用論

海外でも同様の流れが見られました。アメリカの場合、1920年代から戦闘機の必要性を疑問視する意見が出始め、特に1936年にはその流れが主流となっていました。しかし、第二次世界大戦中のシュヴァインフルト爆撃作戦によって戦闘機の護衛の必要性が再認識され、無用論は消退しました。ドイツでも同様の動きがあり、バトル・オブ・ブリテンを経て戦闘機の価値が再評価されました。

1950年代以降の動向

1950年代には、ジェット機の発展やミサイル技術の進化に伴って、有人戦闘機無用論が再浮上しました。この頃は、ミサイルによって戦闘機が不要になるとの考えも強まりました。しかし、ベトナム戦争の経験から、その見解は再評価され、戦闘機に必要な特性が見直されました。

戦闘機無用論は、技術の進化に伴って何度も浮上し、消退してきた複雑な理論です。現代においても、無人機の進展により再び戦闘機の必要性が問われる時代に入っています。

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