戸井線

戸井線について

戸井線（といせん）は函館市の五稜郭駅から、亀田郡戸井町の戸井駅までを結ぶ予定だった鉄道路線であり、結局未成に終わった計画です。1871年から1980年の間に数度の計画が持ち上がりましたが、様々な理由により実現しなかった経緯があります。

概要

戸井線のプロジェクトは1895年に始まりました。函湯鉄道は函館区から亀田郡下湯川村に至る私設鉄道を計画しました。資金不足にもかかわらず、1896年には本免許まで取得しましたが、実現には至りませんでした。結果的に、亀函馬車鉄道と統合され、後の函館市電へと発展していきました。

1920年、軍事上の理由から鉄道院は新たな鉄道建設を調査。1922年には函館から釜谷間の鉄道計画が法律に明文化され、地域の人々はこれに期待を寄せ、地域産品の輸送力を高める目的で、亀田半島全体を結ぶ鉄道運動が展開されました。しかし、函館市民の関心は薄く、他の鉄道路線への関心が高まりました。

戦時中の建設と中断

1944年、戦時中の状況下で戸井村は津軽要塞地帯に編入され、ここに関わる軍事物資の輸送力を強化するために鉄道の建設が急がれました。工事は1936年から始まりましたが、資材不足が続き1943年に工事は中断。その後、1945年には僅かに完成していた区間が便乗利用され、その後の建設再開は実現しないまま終了しました。

戦後の動きと計画

戦後、北海道庁は開発計画の一環として戸井線の工事再開を構想しましたが、推進には至らず、1964年には日本鉄道建設公団に引き継がれましたが、結局実現は見ませんでした。大沼電鉄も1951年に施設を借り受けて開通を試みましたが、資金不足でこれも叶いませんでした。

青函連絡路の影響

さらに1946年には国鉄が青函トンネル計画に着手。戸井線は東口ルート案に盛り込まれましたが、調査の結果、地質的な問題があり、1968年に西ルートで建設されることが決定。戸井線の開通可能性は消え去りました。この他にも大間鉄道の計画が浮上しましたが、こちらも十分な成果を上げられませんでした。

歴史的な工事

1920年代から1940年代にかけては、いくつかの工区に分けて工事が進められました。五稜郭駅から約26kmの区間は設計・工事が進められたものの、戦時体制の影響を受けました。加えて、工事現場には厳しい労働条件の元、朝鮮人の労働者が働いていたという暗い側面がありました。

現在の状況

鹿介との整備により、多くの遺構は道路や公園に転用されるなどして残されています。特に、汐首岬の地域にはコンクリートアーチ橋を含め、多くの遺構が存在し、その多くが劣化の影響を受けつつも、地域の歴史を物語っています。現在は函館市がその全線を管理し、遊歩道などとして活用されています。

まとめ

戸井線は、函館市と戸井町を結ぶ重要な交通インフラの計画でありましたが、様々な事情により実現しなかった運命を辿りました。その歴史は、地域の発展や課題を映し出し、未成線であるにもかかわらず、今でも数々の遺構や物語を残しています。

もう一度検索