戸井町

戸井町：津軽海峡に面した歴史と自然の町

北海道函館市の東部、かつて亀田郡に属した戸井町は、2004年12月1日に函館市に編入されました。渡島半島の南東部に位置し、津軽海峡に面したこの町は、豊かな自然と歴史に彩られた場所でした。

地理と地名の由来

戸井町は、南北に細長い形状をしており、北部は200m級の山々が連なり、南部は津軽海峡に開けた海岸線が広がっていました。特に、汐首岬は北海道と本州の最短距離地点（大間崎まで約17.5km）であり、晴天時には対岸の大間町を望むことができました。この近接性から、青函トンネルの東ルート計画案や津軽海峡大橋計画も検討されたものの、実現には至りませんでした。

町名の由来には諸説あり、アイヌ語の「食べる土のある所」を意味する説や、「土のある所」が転訛したとする説などが存在します。

漁業と歴史

戸井町は古くから漁業が盛んで、江戸時代には昆布の産地として知られていました。コンブの他、マグロ、ウニ、タコ、カレイなどが主要な水産物でした。かつてはイワシ漁も栄え、「鰊御殿」になぞらえて「鰮御殿」が建ち並んでいた時代もあったようです。小安漁港、釜谷漁港、汐首漁港、戸井漁港など複数の漁港があり、活気ある漁業を支えていました。

歴史を紐解くと、縄文時代早期から人々が居住していた痕跡があり、戸井貝塚からは様々な遺物が出土しています。中世には戸井館と呼ばれる館が築かれていたと推測され、14世紀後半に築かれた岡部季澄の館である可能性も示唆されています。また、14世紀頃の戸井町板碑は北海道の有形文化財に指定されています。

江戸時代には松前藩領となり、和人地と蝦夷地の境界付近に位置していました。汐首岬付近に境界線が引かれ、交易拠点として小安場所や戸井場所が置かれ、箱館六箇場所の一つとして栄えました。18世紀には、和人地と蝦夷地の境界は時代とともに東へ移動していったことが記録に残されています。寛政11年（1799年）には、戸井を含む東蝦夷地は天領となりました。

明治時代以降は、1902年に戸井村と小安村が合併し戸井村となり、1968年には町制を施行して戸井町となりました。1971年には青森県大間町と姉妹町提携を結び、フェリーによる交通も盛んになりました。しかし、人口減少と少子高齢化により、2000年代に入ると周辺自治体との合併が検討され始めました。

合併とその後

2003年、函館市、恵山町、椴法華村、南茅部町との合併協議が本格化し、2004年12月1日に函館市に編入されました。合併後、戸井地域は函館市戸井支所として行政運営が行われています。

交通と教育

戸井町には、函館市街とを結ぶバス路線や、大間町とを結ぶフェリー航路がありました。鉄道は、津軽要塞汐首岬砲台への輸送を目的に戸井線が計画・着工されましたが、太平洋戦争の影響で未成線となりました。現在も、汐首岬灯台付近にその遺構が残されています。

教育機関としては、北海道戸井高等学校（2015年閉校）、函館市立潮光中学校、函館市立日新中学校、函館市立戸井西小学校、函館市立日新小学校などがありました。

まとめ

戸井町は、豊かな自然と歴史、そして独自の文化を育んできた町でした。その歴史と文化は、函館市に編入された現在も、戸井支所や地域住民によって大切に受け継がれています。 最短距離で本州と北海道を結ぶという地理的条件は、今後も地域発展の大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

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