戸塚睦夫

戸塚睦夫：喜劇役者としての生涯

1931年、剣劇俳優の父を持つ戸塚睦夫は東京都に生まれた。幼少期からチャンバラ映画や大衆演劇に親しみ、大乗寺八郎にあこがれていたという。東京市立芝商業学校卒業後、シチズン時計勤務を経て、梅沢昇一座や浅香光代劇団、不二洋子劇団などを渡り歩く。その後、浅草のロック座や池袋のフランス座といったストリップ小屋でコメディアンとしてのキャリアをスタートさせた。

浅草の花月劇場で剣劇役者として活動していた際に、奥山劇場で剣劇役者として活動していた三波伸介と出会い、交流を深める。1955年、新宿フランス座の看板女優である水川小夜子と結婚。1女をもうけた。同年、新宿フランス座専属となっていた三波伸介と同じ舞台に立つようになる。

1958年には、新宿フランス座のコメディアン石井均の独立に同行し、「笑う仲間」を旗揚げ。その後、「石井均一座」に再編される。この一座で、伊東四朗や財津一郎といった後に著名となるコメディアン達と知り合う。石井均とのコンビでキャバレー営業なども行っていたが、石井の都合により、三波伸介とコンビを組むこととなる。三波の都合で出演できない際には、伊東四朗を代役として「にせ三波伸介」として活躍した時期もあったという。

1961年には石井均一座が解散。三波伸介、伊東四朗と共に『ぐうたらトリオ』を結成。翌年には『てんぷくトリオ』と改名し、大ボケ役として活躍した。戸塚睦夫のアドリブで三波伸介を驚かせることがあり、それが三波伸介のギャグ「びっくりしたなあ、もう」のきっかけになったという逸話も残っている。

てんぷくトリオとして、舞台やテレビで人気を獲得。『てなもんや三度笠』甲州編などにも出演。1972年にはNHK『お笑いオンステージ』内の『てんぷく笑劇場』に出演するも、間もなく肝臓の病気を発症。入退院を繰り返し、1973年5月12日、42歳の若さで死去した。死因は肝硬変と胃潰瘍併発だった。

引っ込み思案で悲観的な性格だったとされ、アルコール依存症に苦しんでいたという。晩年は、酒がやめられず、そのことが健康を害する原因にもなったと考えられる。三波伸介が戸塚の看病から『笑点』の収録に向かう最中に、戸塚は息を引き取ったという。

戸塚睦夫は、コメディアンとして独特の才能を発揮し、多くの人々に笑いを届けた。三波伸介とのコンビ、そしててんぷくトリオでの活躍は、日本のコメディ史に大きな足跡を残している。彼の早すぎる死は、多くのファンに惜しまれた。

主な出演作品

テレビドラマ
鬼平犯科帳（八代目松本幸四郎版）第1シリーズ 第33話「鬼坊主の花」（1970年5月19日、NET（現・テレビ朝日）） - 左官安 役

文献

* 西条昇『笑伝・三波伸介 - びっくりしたなあ、もう』（風塵社、2000年） ISBN 4938733765

もう一度検索