戸村一作

戸村一作：成田闘争を象徴する生涯

戸村一作（1909-1979）は、千葉県成田市三里塚を舞台とした成田空港建設反対運動（三里塚闘争）の中心人物として知られる活動家です。農民運動や市民運動にも深く関わり、成田市の議会議員も務めました。画家・彫刻家としての才能も持ち合わせていた多才な人物でした。

生い立ちと初期活動

1909年、千葉県成田市三里塚に生まれた戸村は、農家の家業を手伝いながら、成田中学校で教員の中野好夫や中山義秀らから影響を受けました。青年期には、反戦思想を強く持ち、第二次世界大戦中は徴兵を免れるなど、信念を貫く人物でした。戦後は、1952年の破防法闘争や60年安保闘争などに参加し、社会運動への関与を深めていきます。富里村（現・富里市）の国際空港建設反対運動では、クリスチャンとしての信仰に基づき、県内の教会を回り支援を求める活動も行っていました。

三里塚闘争と反対同盟

1966年、三里塚が新東京国際空港の建設予定地となると、戸村は富里での経験を生かし、三里塚芝山連合空港反対同盟の委員長に就任します。当初は代表就任をためらいましたが、地元農民の強い決意を受け、運動をリードすることになります。反対同盟は、政府との激しい衝突を繰り返す中で、戸村は革新政党との関係調整や新左翼との連携など、難しい舵取りを強いられました。成田市長選挙にも立候補し当選、議会活動と運動活動を両立させています。

1968年以降、機動隊との衝突が激化し、戸村自身も負傷するなど、運動は過激さを増していきます。1971年の代執行では、反対派の襲撃による機動隊員死亡事件（東峰十字路事件）が発生し、世論は反対同盟に批判的になります。しかし、戸村は東側諸国への訪問を通じ、国際的な支持を訴えるなど、運動を継続しました。1974年の参議院選挙には無所属で出馬し、「成田空港反対」「世直し一揆」を掲げましたが落選しました。

空港開港後も、戸村は「空港を完全に抹殺するまで闘争を貫徹する」と宣言し、ゲリラ活動ともいえる抗議行動が続きました。しかし、1979年、病により死去します。その最期の言葉は「デモは出発したか」だったと言われています。

人物像と影響

戸村は敬虔なクリスチャンであり、三里塚教会を拠点に、日曜学校や文化活動などにも携わっていました。しかし、空港問題を巡って教会との対立も生じ、教会の分裂という結果も招きます。

運動初期は平和主義者であった戸村ですが、機動隊との衝突による負傷を機に、過激な主張をするようになります。この転換は、彼の信念と現実の葛藤を表していると言えるでしょう。戸村は、政府や警察との妥協を許さず、一貫して反対運動を主導し続けました。

戸村は、演説の力も持ち合わせており、その熱意は地元住民だけでなく、新左翼や運動支援者たちの共感を呼びました。彼は三里塚闘争の象徴的存在となり、その活動は多くの書籍や漫画の題材にもなっています。

戸村一作の生涯は、信念を貫き通すこと、そしてその過程で起こる葛藤や変化を描き出しています。彼の活動は、日本の社会運動史に大きな足跡を残し、現代社会に問いかける多くの要素を含んでいます。彼の死後も、三里塚闘争は日本の社会問題として議論され続けています。

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