戸来岳

戸来岳（へらいだけ）

戸来岳は、青森県新郷村と十和田市の境界にそびえる山です。最高峰の三ツ岳（標高1,159m）と、大駒ヶ岳（標高1,144m）の二つの主要な山をまとめて戸来岳と呼びます。一部のガイドブックでは、大文字山（標高1,014m）を含めて戸来岳とする場合もあります。

三ツ岳は、十和田湖方面から見ると美しい正三角形に見えますが、十和田市方面から眺めると、三つのピーク（三ツ岳、大駒ヶ岳、大文字山）が連なって見えるのが特徴です。この三つのピークが、三ツ岳という山名の由来になったと考えられています。
地元の人々からは、親しみを込めて「ダケ」という愛称で呼ばれています。

概要

戸来岳は、その豊かな自然と独特な景観から、東北百名山に選ばれています。三ツ岳の山頂には一等三角点が設置されています。

山の斜面は、標高に応じて植生が変化します。麓にはブナ林が広がり、標高が上がるにつれてダケカンバ林、ササの自然草原へと移行します。山頂付近は亜高山帯の植生が分布しており、特にイチイやミネアザミの群落が特徴的です。

山頂付近のイチイやコメツツジの群落は、青森県内でも非常に珍しい規模を誇ります。特に自生する矮生イチイ林は貴重であり、青森県自然環境保護条約によって保護されています。

また、大駒ヶ岳登山道の途中、標高1,060m地点に立つダケカンバは、森林限界付近の厳しい環境で生き抜いてきた風格があります。積雪や雪崩、強風に耐えながら成長したその姿は独特で、樹齢は約300年と推定されています。全国巨樹・巨木林の会の調査により、「日本一のダケカンバ」と評価されています（2009年9月27日）。

登山ルート

戸来岳への登山道は、主に兎平駐車場からと、平子沢登山口からの二つのルートがあります。

兎平駐車場から：大駒ヶ岳を経由して三ツ岳に至るコースが一般的です。
平子沢登山口から：アクリ峠や大文字山を経由して三ツ岳を目指すコースがあります。アクリ峠から十和利山へ縦走するコースもありますが、ササ藪が深いため、注意が必要です。（2011年の夏にササ藪の刈り払いが行われました。）

信仰

昔、八戸の船6隻が漁に出た際、突然三ツ岳に黒雲がかかりました。4隻は「きまり」に従い港に引き返しましたが、大漁を狙って「きまり」を守らず漁を続けた残りの2隻は遭難してしまいました。無事に帰還した4隻の船の漁師たちは、三ツ岳の山の神様に守られたおかげと感謝し、ご神塔を三ツ岳に向けて建立しました。

このご神塔は、現在も十和田市大平頭（十和田市大平牧野と十和田湖町惣辺牧野の境界付近）に現存しています。ご神塔には、「1803年5月15日」と刻まれています。5月15日は十和田神社の例大祭の日です。

参考文献

* 東北百名山地図帳

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