戸沢充則

戸沢充則：日本の考古学界を牽引した巨星

戸沢充則（1932年10月19日 - 2012年4月9日）は、日本の考古学者であり、明治大学の名誉教授、そして元学長という重責を担った人物です。長野県茅野市にある尖石縄文考古館の名誉館長としてもその名を知られています。

生い立ちと学問への道

長野県岡谷市で生まれた戸沢は、旧制諏訪中学（現在の長野県諏訪清陵高等学校・附属中学校）を経て明治大学文学部へと進みました。考古学者としての道を歩むきっかけは、旧制中学時代に土器と出会ったことでした。恩師である藤森栄一の指導のもと、考古学研究に情熱を注ぎました。1961年には明治大学の講師となり、1967年には「先土器時代文化の構造」というテーマで文学博士の学位を取得。1968年には同大学の教授に就任しました。

考古学者としての功績

戸沢は、明治大学において考古学博物館長、文学部長、そして学長といった要職を歴任しました。豊富な発掘現場での経験を持ち、数多くの遺跡調査や保護に尽力し、日本の考古学研究に大きく貢献しました。特に、2000年から2002年にかけては、日本考古学協会「前・中期旧石器問題調査研究特別委員会」の委員長として、旧石器捏造事件の検証調査に携わりました。この事件の真相究明に尽力し、考古学界の信頼回復に大きく貢献しました。

社会活動と受賞

戸沢は、考古学研究にとどまらず、社会活動にも積極的に参加しました。「九条科学者の会」の呼びかけ人を務め、平和と科学の発展を訴えました。2011年には、「シリーズ『遺跡を学ぶ』」の監修で第65回毎日出版文化賞を受賞。その功績は広く社会に認められました。

著書一覧

戸沢は数多くの著書を執筆し、考古学の普及と発展に貢献しました。主な著書には以下のようなものがあります。

縄文人との対話ー私の考古学手帖（名著出版、1987）
縄文時代史研究序説（名著出版、1990）
先土器時代の文化の構造（同朋舎出版、1990）
考古学のこころ（新泉社、2003）
考古地域史論ー地域の遺跡・遺物から歴史を描く（新泉社、2004）
歴史遺産を未来へ残すー信州・考古学の旅（新泉社、2005）
語りかける縄文人　新泉社,　2007.6.

編著

縄文人は生きているー原始との対話（有斐閣、1985）
探訪縄文の遺跡東日本編（有斐閣選書、1985）
古代の知恵を発掘する（監著、福武書店、1986）
縄文人と貝塚（六興出版、1989）
縄文時代研究辞典（東京堂出版、1994）
縄文人の時代（新泉社、1995）
月見野の発掘 先土器時代研究の転換点　新泉社,　2009.3.

共編著

原始・古代の生産と生活 日本考古学を学ぶ2（大塚初重共編、有斐閣選書、1979）
北海道白滝服部台における細石器文化　杉原荘介共著　臨川書店　1981.11.
探訪先土器の遺跡 安蒜政雄共編.1983.12　有斐閣選書
新版　古代の日本 第8巻. 関東 笹山晴生共編 角川書店 1992.10
大塚初重共編『日本考古学用語辞典』柏書房、1996年6月。ISBN 4-7601-1302-9

参考文献

宝月圭吾編 『長野県風土記』 旺文社、1986年

戸沢充則は、その生涯を通じて日本の考古学の発展に大きく貢献した人物です。彼の研究成果や活動は、後世に受け継がれ、日本の歴史と文化への理解を深める上で重要な役割を果たし続けています。

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