戸田忠恕

戸田忠恕：幕末の宇都宮藩主、その生涯と時代

戸田忠恕（とだ ただゆき/ただくみ/ただひろ）は、江戸時代末期、激動の幕末期に下野国宇都宮藩の藩主を務めた人物です。田原戸田家嫡流14代当主であり、宇都宮藩戸田家としては12代目に当たります。

生涯

弘化4年（1847年）に、当時の藩主であった戸田忠温の六男として生まれました。安政3年（1856年）、兄である忠明の急逝により家督を継ぎ、若干9歳で藩主となります。同時に、従五位下・越前守に任官しました。

幼少のため、藩政は家老の間瀬和三郎（後の戸田忠至）と県勇記が補佐しました。間瀬の主導により、歴代天皇陵の修理が建議され、忠恕は山陵奉行を任じられます。間瀬と県を中心に京都、大和、河内、近江の各地で山陵の調査と修理が行われ、その功績により従四位下に叙されました。また、領内では間瀬と県の主導で篠井金山の開発に乗り出しますが、これは2年で失敗に終わっています。

忠恕は尊王の志が篤く、元治元年（1864年）に天狗党の乱が発生した際には、宇都宮藩兵が筑波山へ出撃したものの、幕府の命令を待たずに帰陣してしまいます。さらに、藩内には戸田光形をはじめとする宇都宮天狗党という攘夷勢力が存在したこともあり、幕府の怒りを買うこととなります。幕府からは、領地7万7000石のうち2万7000石を没収し、5万石とする処分が下され、忠恕は隠居謹慎、養嗣子の忠友に家督を譲り、田原戸田家は陸奥棚倉藩へ転封という厳しい処分が決定しました。しかし、県と岡田真吾が山陵補修の際に親交を深めていた正親町三条実愛と忠至に温情を請い、彼らの尽力によりこの処分は延期、最終的には中止となりました。

慶応4年（1868年）の戊辰戦争では、新政府軍に与して参戦します。大鳥圭介や土方歳三率いる旧幕府軍によって宇都宮城は一時落城しますが、新政府軍の加勢を得て奪還に成功しました（宇都宮城の戦い）。忠恕は朝廷からの召し出しを受けますが、病のため果たせず、同年5月に22歳という若さで病死しました。墓は田原戸田家の菩提寺である宇都宮の英厳寺にあります。明治2年（1869年）に従四位上、明治30年（1897年）に従三位が追贈されました。

現在、栃木県護国神社の祭神として祀られています。

人物・エピソード

尊王の志士： 幼少の頃から尊王攘夷の思想に共鳴し、幕末の動乱期には新政府軍に積極的に協力しました。
若き藩主の苦悩： 9歳で藩主となったため、家老による補佐を受けながら藩政を担いました。幕府からの厳しい処分を乗り越え、藩を守り抜こうとしました。
戊辰戦争での活躍： 宇都宮城の戦いでは、新政府軍の一員として旧幕府軍と戦い、城の奪還に貢献しました。

参考文献

島遼伍『下野街道物語 大いなる栃木の街道をゆく』下野新聞社、1999年。
田尻佐 編『贈位諸賢伝 増補版 上』（近藤出版社、1975年）
福田光男著『宇都宮城物語』（下野新聞社発行）

関連リンク

* 栃木県護国神社

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