戸田村 (静岡県)

静岡県田方郡戸田村：歴史と自然が織りなす記憶

戸田村は、かつて静岡県の田方郡に位置していた村です。2005年4月1日に沼津市に編入合併され、その歴史に幕を閉じました。しかし、その豊かな自然と独自の文化は、今もなお人々の記憶の中に息づいています。

地理

戸田村は、駿河湾に面しており、その美しい海岸線が特徴でした。特に、戸田地区の正面に広がる戸田湾は、穏やかな波と豊かな漁場に恵まれていました。戸田地区の中央を流れる戸田大川は、村の生活を支える重要な水源でした。また、戸田漁港の正面に突き出す御浜岬は、美しい砂嘴として知られ、観光名所となっていました。

村の北側には、標高982mの達磨山がそびえ立ち、伊豆市との境界を形成していました。この山は、ハイキングコースとしても人気があり、四季折々の自然を楽しむことができました。

歴史

戸田村の歴史で特筆すべきは、1854年（嘉永7年）に起こった安政東海地震です。この地震による津波で、ロシア海軍のディアナ号が大破し、宮島村（現富士市）沖で沈没しました。しかし、この悲劇をきっかけに、宮大工の上田寅吉らが、救助されたロシア人とともにヘダ号を建造し、日本の造船技術の発展に大きく貢献しました。

1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行により、戸田村と井田村が合併し、新たな戸田村が誕生しました。その後、平成の大合併により、2005年（平成17年）4月1日に沼津市に編入され、その歴史に幕を閉じました。

ヘダ号

ヘダ号は、日露友好の象徴とも言える西洋式帆船です。ディアナ号の沈没後、プチャーチン提督と乗組員は、地元住民の協力のもと、戸田村で新たな船の建造に取り組みました。資材の調達や技術的な問題など、多くの困難を乗り越え、約3ヶ月という短期間で完成したのが、ヘダ号でした。

ヘダ号は、プチャーチン提督一行をロシアへと送り届けた後、日本に返還されました。その後、戊辰戦争で使用されたという記録が残っていますが、その後の消息は不明です。しかし、ヘダ号の建造をきっかけに、戸田村では君沢形の量産が行われ、日本の造船技術の発展に大きく寄与しました。

産業と名産

戸田村は、漁業が盛んな村でした。特に、世界最大の現生節足動物であるタカアシガニは、戸田の名物として知られています。また、橘の日本最大の自生地でもあり、柑橘類の栽培も盛んに行われていました。

教育

戸田村には、戸田小学校と戸田中学校がありました。小学校は、明治初期に開校し、長い歴史を持っていました。中学校は、戦後の学制改革により創立され、地域の子どもたちの教育を担ってきました。

文化財と観光スポット

戸田村には、多くの文化財や観光スポットがありました。部田神社や諸口神社は、古くから地域の人々に信仰されてきた神社です。宝泉寺は、プチャーチン提督の宿所となった寺として知られています。また、戸田温泉は、美しい景色を眺めながら温泉を楽しめる温泉地として人気を集めていました。

沼津市戸田造船郷土資料博物館では、ディアナ号やヘダ号、プチャーチン提督に関する資料が展示されており、戸田村の歴史を学ぶことができます。

まとめ

戸田村は、沼津市に編入合併されましたが、その歴史と文化は、今もなお人々の心の中に生き続けています。ヘダ号建造の地としての歴史、タカアシガニや橘などの名産、美しい自然など、戸田村には多くの魅力がありました。これらの魅力は、これからも大切に守り、後世に伝えていく必要があります。

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