戸田氏教

戸田氏教：大垣藩中興の祖と幕政改革の功労者

戸田氏教は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した大名であり、美濃国大垣藩の第7代藩主です。大垣藩戸田家8代当主として、藩政改革に尽力し、幕府老中としても重要な役割を果たしました。その生涯は、藩の繁栄と幕府の安定に大きく貢献した、波乱に満ちたものでした。

生い立ちと家督相続

宝暦5年（1755年）、上野国館林藩主・松平武元の五男として誕生しました。幼名は松平元起。父・武元は、水戸徳川家の分家筋にあたる府中松平家から越智松平家に入り、老中職を務めた人物です。元起は、大垣藩6代藩主・戸田氏英の養子となり、氏教と名乗って家督を相続しました。

その後、奏者番、寺社奉行、側用人などを歴任し、寛政2年（1790年）には老中に就任。幕府の要職に登り詰めました。寛政6年（1794年）には、増上寺・文昭院霊屋の修理を総督として指揮しました。

ロシア使節との外交

氏教の政治手腕が特に際立ったのは、ロシアとの外交においてです。寛政4年（1792年）、ロシア帝国の使節ラクスマンが、漂流民である大黒屋光太夫を伴って蝦夷地（現在の北海道）に来航し、通商を要求しました。

幕府は、この事態に対処するため、目付を派遣して交渉にあたりました。交渉の結果、ロシア側は一部の目的を達成したものの、完全な通商は認められず、日本への本格的な進出は阻止されました。

その後、文化元年（1804年）、ロシア使節レザノフが再び来航し、通商を求めました。幕府は、この時にも強硬な姿勢を貫き、レザノフの要求を拒否しました。この対応は、ラクスマン来航時の対応よりも厳しく、鎖国体制の維持を明確に示すものでした。

こうしたロシアとの外交において、氏教は、幕府の対外政策に大きな影響を与え、北方領土の防衛と鎖国体制の維持に貢献しました。特に、ロシアの進出を警戒しつつも、武力衝突を避け、穏便に退去させるための政策を推進した点は、彼の外交手腕の高さを示しています。文化3年（1806年）には、ロシア船の来航への対応を定めた「文化の撫恤令」が発布されました。これは、ロシア船を発見した場合は説得して退去させ、必要な場合は物資を提供するが、決して上陸させないというものでした。

幕政改革と藩政

老中として、氏教は幕府の財政改革にも尽力しました。対外問題や将軍・家斉の奢侈によって、幕府財政は赤字に陥っていましたが、氏教は経費削減策を断行し、財政再建に貢献しました。

また、大垣藩においても、教育や治水事業に力を入れ、藩政の改革に努めました。勤勉な藩政運営を行い、藩の財政強化と軍事力の増強に成功させました。その功績から、「大垣中興の名主」と称えられるようになりました。

晩年

享和3年（1803年）、老中首座に就任しました。幕閣の一員として、幕府財政の改革や外交問題など、数々の重要な政策に携わり、幕府と藩の安定に大きく貢献しました。文化3年（1806年）、老中在任中に52歳で亡くなりました。死後、従三位を追贈されました。

まとめ

戸田氏教は、優れた政治家として、幕府と藩の双方で重要な役割を果たしました。ロシアとの外交、幕府財政改革、藩政改革など、多岐にわたる分野で手腕を発揮し、後世に大きな功績を残しました。彼の生涯は、江戸時代後期の日本社会の動乱期を生き抜いた、理想的な大名像を示すものです。彼の功績は、現代においても高く評価されています。

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