戸草ダム

戸草ダムについて

戸草ダム（とぐさダム）は、長野県伊那市の一級河川である天竜川水系三峰川（みぶがわ）の上流部に位置する、計画中のダムです。このダムは、国土交通省中部地方整備局が施工を担当する国土交通省直轄ダムであり、天竜川水系内での佐久間ダムに次ぐ規模を誇ります。高さは140.0メートルで、重力式コンクリートダムとして設計されています。戸草ダムは、第二次三峰川総合開発事業の一環として、藤美和ダムの再開発事業と連携して計画されました。

このダムの建設は、洪水防止や地域への水供給、さらには水力発電を促進するための特定多目的ダムとして進められてきました。しかし、さまざまな事情により長期間着工ができず、2008年6月には国土交通省が計画の中止を発表しました。

ダムの歴史

三峰川において、美和ダムが1959年に完成していますが、その後も天竜川水系における水害が相次ぎました。特に1982年と1983年には大規模な水害が発生したため、当時の建設省（現・国土交通省中部地方整備局）は治水計画を見直し、ダムによる洪水調整策を図る必要があると判断しました。その結果、1987年に戸草ダムの建設計画が提出されました。

ダムの計画は美和ダムの再開発と連携され、さらに拡大される形で第二次三峰川総合開発事業として進められました。戸草ダムは、重力式コンクリートダムとして、高さ140mの規模を持ち、貯水容量も美和ダムの近くまで達することが期待されていました。洪水調節、不特定利水、発電、工業用水という目的で設計されたものの、長野県は工業用水事業から撤退を表明し、事業の内容は不透明となっていました。

事業の動向

近年、公共事業の見直しが進んでいる中で、戸草ダムの建設計画も影響を受けることとなりました。特に長野県の知事であった田中康夫は「脱ダム宣言」に基づき、県営ダム計画を中止しました。また、戸草ダムに関しては、精密機械工場への工業用水供給計画が見直され、水力発電事業についてもほとんど進展が見られない状況でした。1984年の計画発表から20年以上も進捗しない状況が続いていました。

国土交通省も、構造改革の一環として全国の直轄ダム事業を見直し、2005年に計画の規模縮小を検討する方針を発表しました。具体的には、北海道や青森県、さらに第二次三峰川総合開発事業などが対象となり、進捗のない戸草ダムもその一つとされました。

その後、2008年6月に国土交通省は戸草ダムの事業中止を発表しました。この中止に対し、地元の伊那市では驚きや反発の声が上がり、三峰川上流域の治水対策を万全にしてほしいとの要望も寄せられました。このように、戸草ダムの計画は地元自治体の動向や国の方針によって大きく動いていくことになりました。

関連情報

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