抒情組曲 (グリーグ)

グリーグ『抒情組曲』作品54について

エドヴァルド・グリーグの『抒情組曲』作品54は、元々ピアノ曲集である『抒情小曲集』第5集（作品54）から4曲を選び、管弦楽用に編曲したものです。

作曲（編曲）の経緯

『抒情小曲集』第5集は、全10集からなるこの曲集の中でも特に評価の高い作品群です。この第5集から4曲が、1895年にニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者アントン・ザイドルによって管弦楽編曲され、『ノルウェー組曲』というタイトルで発表されました。ザイドルが選んだのは、原曲の第2曲「ノルウェー農民の行進」、第3曲「小人の行進」、第4曲「夜想曲」、第6曲「鐘の音」でした。

ザイドルの死後、グリーグの姪の婿であるノルウェーの作曲家ヨハン・ハルヴォルセンが、ザイドルの未亡人から総譜を受け取り、1904年にクリスチャニア（現在のオスロ）の国立劇場で指揮しました。このリハーサルを聴いたグリーグは、自ら改訂することを決意し、ザイドルの未亡人の承諾を得て、同年に改訂作業を行いました。元々ザイドルの編曲は無断で行われたものでしたが、グリーグは改訂料まで未亡人側に支払っています。

グリーグは、ザイドルが編曲しなかった原曲第1曲「羊飼いの少年」を新たに編曲し、他の曲もほぼ全面的にオーケストレーションを改めました。さらに、「鐘の音」は改訂後に組曲から除外されています。曲順も変更され、現在知られている『抒情組曲』は、名実ともにグリーグ自身による編曲作品となっています。

初演に関する記録は残されていません。楽譜は1905年にライプツィヒのペータース社から出版されました。

演奏時間は、各曲順に約5分、約2分、約4分、約3分で、合計約14分です。

楽器編成

この組曲は、以下の楽器で演奏されます。

ピッコロ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
大太鼓
シンバル
ハープ
弦五部

楽曲構成

組曲は以下の4曲で構成されています。

1. 羊飼いの少年 (Gjætergut):
弦五部とハープのみで演奏されます。原曲はト短調ですが、イ短調に変更されています。
2. ノルウェー農民の行進 (Ganger):
原曲はハ長調ですが、ニ長調に変更されています。
3. 夜想曲 (Aftenstemning)
4. 小人の行進（トロルの行進） (Troldtog)
後半2曲は、原曲と曲順が入れ替わっています。

注意点として、『抒情小曲集』第5集と『抒情組曲』は同じ作品番号（作品54）を持っているため、混同しないように注意が必要です。

その他の編曲

グリーグは、『抒情小曲集』第9集（作品68、1898年）からも、1899年に第4曲「山の夕べ」（オーボエ、ホルン、弦楽合奏）と第5曲「ゆりかごの歌」（弦楽合奏のみ）を編曲しています。

また、グリーグやザイドル以外にも、『抒情小曲集』の曲を管弦楽編曲した例は多く、第8集（作品65、1896年）から「トロルドハウゲンの婚礼の日」が編曲され、親しまれています。

参考文献

『作曲家別名曲解説ライブラリー18 北欧の巨匠』（音楽之友社、1994年）

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