抗酸菌

抗酸菌とは

抗酸菌（こうさんきん、英: Acid-fast bacillus）は、特殊な染色法を用いても脱色されない細菌の総称です。この言葉は、主にマイコバクテリウム属の細菌を指しますが、広義には他の属にも適用されます。抗酸菌の特異な性質は、塩酸酸性アルコールによって脱色されにくいことに起因しており、この特性から「抗酸菌」という名称が生まれました。さらに、これらの菌は特定の染色法、特にチール・ネールゼン染色を使用することで、その特徴を強調されます。

抗酸菌の分類

抗酸菌は、結核菌群、非結核性抗酸菌およびらい菌群の3つに大別されます。

1. 結核菌群: これは、Mycobacterium tuberculosisなど4種類の病原菌を含み、結核を引き起こします。
2. 非結核性抗酸菌: これは、結核菌群やらい菌群以外の抗酸菌で、90種類以上が存在します。この中で人に病原性を持つものは約30種です。例を挙げると、M. aviumやM. ulcerans（ブルーリ潰瘍の原因）などがあります。
3. らい菌群: これには、人工培地では培養できない抗酸菌が含まれ、主にハンセン病を引き起こすM. lepraeが知られています。その他の種類には、ネズミに感染するM. lepraemuriumなどがあります。

抗酸菌の染色性

抗酸菌を石炭酸フクシンで染色する際に、チール・ネールゼン染色という手法が用いられます。この染色法では、まず石炭酸フクシンで菌を赤く染色した後、塩酸アルコールで脱色を行い、背景部分をメチレンブルーで青く染色します。このプロセスにより、抗酸菌がや鮮やかな赤色として視認されます。

特に、マイコバクテリウム、ノカルディア、コリネバクテリウムなどは、共通してミコール酸という脂肪酸を含むため、高い脂質含量を持つ細胞外皮を持っています。これらの細菌は、放線菌に分類され、共通の特徴を示します。たとえば、ジフテリア菌はコリネバクテリウム属に属しますが、染色方法としてはチール・ネールゼン染色ではなく、ナイセル染色が用いられ、ナイセル染色によっては黄色く染まります。

さらに、原虫であるクリプトスポリジウムのオーシストも抗酸染色で赤く示されますが、微生物学では細菌とは異なる取り扱いを受けます。原虫は真核生物であり、細菌は原核生物です。

グラム染色性

抗酸菌は、グラム染色においても特徴的です。結核菌とらい菌はともにグラム陽性であり、紫色に染まりますが、結核菌は特に難染色性を示します。この点で、グラム染色はペプチドグリカン層の性質を利用しています。

特徴と共通の機構

抗酸菌の感染能力は特に高く、マクロファージに感染して増殖することで知られています。この特性が、結核やハンセン病が難治性な理由の一因とされています。また、BCGワクチンは結核菌と同じ抗酸菌に属するため、ハンセン病に対しても一定の効果を持つとされています。

抗酸菌は医療および公衆衛生における重要な対象であり、基本的な理解が難病の制御に寄与する可能性があります。したがって、これらの細菌への認識が高まることが期待されます。

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