折下吉延
折下 吉延（おりしも よしのぶ、1881年10月5日 - 1966年12月23日）は、近代日本における代表的な造園家であり都市計画家です。
山形県新庄市に生まれた折下は、東京帝国大学農科大学農学科で学び、1908年に卒業しました。大学卒業後、宮内省の内苑寮園芸掛技手として新宿御苑に奉職し、造園の技術と知識を深めます。ここでは、福羽逸人の指導のもと、御苑や代々木御料地の管理に携わり、洋蘭の品種改良や菊、果樹、庭園芸など幅広い分野の研究を行いました。また、この頃には東京府立園芸学校で臨時講師を務め、教育活動も始めています。
1912年、内苑寮を離れた折下は、奈良女子高等師範学校（現奈良女子大学）の教授となり、園芸学を担当しました。3年間教鞭をとる傍ら、1914年には橿原神宮の林苑整備事業に関わります。この事業は、日本の神社林苑整備および造園事業において、最初期の最大規模のものとされています。
1915年、明治神宮の造営技師に任命されると、神宮の内外苑の設計と施工に深く関与しました。特に外苑においては、神宮本体の造営に加え、街路樹の設計を手がけ、現在の表参道のケヤキ並木や神宮外苑のイチョウ並木といった象徴的な景観を生み出しました。彼のデザインは、従来の日本式造園の典雅さと洋風の手法を巧みに組み合わせたもので、当時の造園界に新しい潮流をもたらしました。
1919年から1920年にかけては内務省の嘱託として欧米諸国を視察し、都市計画や公園緑地事業に関する知見を深めます。帰国後は長崎に移り、長崎市の顧問や長崎県の嘱託として、県立雲仙公園などの整備に取り組みました。
1923年9月の関東大震災発生後、折下は臨時震災救護事務局事務官として、公園内に設置される仮設住宅の建設調整を担当しました。同年10月には帝都復興院技師、後に復興局建築部公園課長に任命され、帝都復興事業における公園・緑化分野の責任者となります。復興局に公園を専管する課が設置されたことは、中央官庁における公園行政組織の誕生を意味する歴史的な出来事でした。折下はこの立場で、隅田公園、浜町公園、錦糸公園、横浜の山下公園といった大規模公園の新設や、東京・横浜の街路樹、広場の植栽など、都市の緑化事業を強力に推進しました。
復興事業に貢献する傍ら、母校である東京帝国大学農学部で講師を務め、「園邑計画論（公共緑地学）」を担当し、後進の育成にも力を注ぎました。1932年からは帝都復興院理事を務めましたが、同時期に満鉄理事であった十河信二に招かれ、満鉄経済調査会の嘱託として大連に拠点を移します。終戦まで大連に滞在し、大連、長春、哈爾浜、上海、青島など、満州や中国各地の都市計画に参画し、特に公園緑地の重要性を強調する計画立案に貢献しました。また、彼は明治神宮造営局や復興局時代の部下、東大の教え子らを各地の行政機関に派遣し、都市計画や公園事業を推進するための人的ネットワーク構築に尽力しました。優秀な技術者を登用・配置し、人脈を育てるその手腕は、多くの事業成功の要因となりました。
終戦後日本に引き上げた後も、造園家としての活動を続け、函館市内の公園調査、常盤公園、八幡市皿倉山、下関市火の山などの風致計画、軍用跡地の公園化促進、首都の緑化推進などに貢献しました。また、ゴルフ場設計の分野でも先駆的な役割を果たし、日本初のゴルフ場とされる学士会赤羽ゴルフ場をはじめ、国内外の多くのコースを手がけています。
その他、雲仙公園、広島市北治公園、新庄城址公園、松本市運動公園、京都市御成婚記念運動場、倉敷市向山公園、徳島市眉山公園、会津鶴ヶ城公園、台中市水源地公園、大連市中央公園改良、吉林市北山公園など、数多くの公園計画に携わりました。
彼の園路設計におけるフランス式の曲線は、独特の美しさから「歌麿式カーヴ」とも呼ばれていました。戦後も都市計画の指導や、国立公園事業、自然公園、日本道路公団等の委員として日光太郎杉の保護など、自然美の保全にも尽力しました。
彼の長年の功績を称え、都市計画協会では遺族からの寄付を基に「公園緑地折下功労賞」を設けています。折下吉延は、日本の都市と緑地の発展に多大な貢献をした、近代造園史における重要な人物です。
主なゴルフ場設計
主な関与公園
山形県新庄市に生まれた折下は、東京帝国大学農科大学農学科で学び、1908年に卒業しました。大学卒業後、宮内省の内苑寮園芸掛技手として新宿御苑に奉職し、造園の技術と知識を深めます。ここでは、福羽逸人の指導のもと、御苑や代々木御料地の管理に携わり、洋蘭の品種改良や菊、果樹、庭園芸など幅広い分野の研究を行いました。また、この頃には東京府立園芸学校で臨時講師を務め、教育活動も始めています。
1912年、内苑寮を離れた折下は、奈良女子高等師範学校（現奈良女子大学）の教授となり、園芸学を担当しました。3年間教鞭をとる傍ら、1914年には橿原神宮の林苑整備事業に関わります。この事業は、日本の神社林苑整備および造園事業において、最初期の最大規模のものとされています。
1915年、明治神宮の造営技師に任命されると、神宮の内外苑の設計と施工に深く関与しました。特に外苑においては、神宮本体の造営に加え、街路樹の設計を手がけ、現在の表参道のケヤキ並木や神宮外苑のイチョウ並木といった象徴的な景観を生み出しました。彼のデザインは、従来の日本式造園の典雅さと洋風の手法を巧みに組み合わせたもので、当時の造園界に新しい潮流をもたらしました。
1919年から1920年にかけては内務省の嘱託として欧米諸国を視察し、都市計画や公園緑地事業に関する知見を深めます。帰国後は長崎に移り、長崎市の顧問や長崎県の嘱託として、県立雲仙公園などの整備に取り組みました。
1923年9月の関東大震災発生後、折下は臨時震災救護事務局事務官として、公園内に設置される仮設住宅の建設調整を担当しました。同年10月には帝都復興院技師、後に復興局建築部公園課長に任命され、帝都復興事業における公園・緑化分野の責任者となります。復興局に公園を専管する課が設置されたことは、中央官庁における公園行政組織の誕生を意味する歴史的な出来事でした。折下はこの立場で、隅田公園、浜町公園、錦糸公園、横浜の山下公園といった大規模公園の新設や、東京・横浜の街路樹、広場の植栽など、都市の緑化事業を強力に推進しました。
復興事業に貢献する傍ら、母校である東京帝国大学農学部で講師を務め、「園邑計画論（公共緑地学）」を担当し、後進の育成にも力を注ぎました。1932年からは帝都復興院理事を務めましたが、同時期に満鉄理事であった十河信二に招かれ、満鉄経済調査会の嘱託として大連に拠点を移します。終戦まで大連に滞在し、大連、長春、哈爾浜、上海、青島など、満州や中国各地の都市計画に参画し、特に公園緑地の重要性を強調する計画立案に貢献しました。また、彼は明治神宮造営局や復興局時代の部下、東大の教え子らを各地の行政機関に派遣し、都市計画や公園事業を推進するための人的ネットワーク構築に尽力しました。優秀な技術者を登用・配置し、人脈を育てるその手腕は、多くの事業成功の要因となりました。
終戦後日本に引き上げた後も、造園家としての活動を続け、函館市内の公園調査、常盤公園、八幡市皿倉山、下関市火の山などの風致計画、軍用跡地の公園化促進、首都の緑化推進などに貢献しました。また、ゴルフ場設計の分野でも先駆的な役割を果たし、日本初のゴルフ場とされる学士会赤羽ゴルフ場をはじめ、国内外の多くのコースを手がけています。
その他、雲仙公園、広島市北治公園、新庄城址公園、松本市運動公園、京都市御成婚記念運動場、倉敷市向山公園、徳島市眉山公園、会津鶴ヶ城公園、台中市水源地公園、大連市中央公園改良、吉林市北山公園など、数多くの公園計画に携わりました。
彼の園路設計におけるフランス式の曲線は、独特の美しさから「歌麿式カーヴ」とも呼ばれていました。戦後も都市計画の指導や、国立公園事業、自然公園、日本道路公団等の委員として日光太郎杉の保護など、自然美の保全にも尽力しました。
彼の長年の功績を称え、都市計画協会では遺族からの寄付を基に「公園緑地折下功労賞」を設けています。折下吉延は、日本の都市と緑地の発展に多大な貢献をした、近代造園史における重要な人物です。
主なゴルフ場設計
主な関与公園
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