押山保明

押山保明：映画監督、プロデューサー、そしてプロレスのプロモーター

押山保明（おしやま やすあき、1903年9月1日 - 1988年10月13日）は、映画監督、映画プロデューサー、そしてプロレスのプロモーターとして、多岐にわたる分野で足跡を残しました。大正期の無声映画監督としてキャリアをスタートさせ、後にプロデューサー、そしてプロモーターへと転身。その異色の経歴は、映画界のみならず、プロレス界にも影響を与えました。

生い立ちと映画界への足跡

1903年（明治38年）9月1日、押山保明は東京市小石川区（現在の文京区後楽）に生まれました。学生時代から浅草公園六区の映画館「帝国館」で週刊ニュース「第一新聞」の編集に携わっていました。小山内薫に憧れ、1920年（大正9年）4月には16歳で松竹キネマに入社。映画界でのキャリアをスタートさせます。

「帝国館」を経営していた小林喜三郎が、当時のスター活動弁士であった津田秀水に「映画協会」を設立させ、津田を主演俳優・映画監督としてデビューさせる際、その第一作『熱球』の字幕を押山が担当しました。これが押山にとって最初の「字幕」の仕事となり、同年中に製作された映画『山頂の碑』では、17歳にして映画監督デビューを果たしました。

当時、「天然色活動写真」（天活）の社員であり映画理論家として知られていた帰山教正の「映画芸術協会」が1919年（大正8年）に設立されました。無声映画の時代にあって、同社は弁士なしでもストーリーやセリフが理解できるように「字幕」を採用し、字幕スタッフ名をフィルムにクレジットするという画期的なポリシーを打ち出しました。押山は引き続き「映画芸術協会」の映画に出演し、監督としても活躍しました。

1923年（大正12年）9月1日に関東大震災が発生。映画界で働きつつ学生でもあった押山は、この震災を機に慶應義塾を中退しました。

関西での活動とプロデューサーへの転身

1924年（大正13年）、20歳の時に押山は大阪に移り、日活関西支店の宣伝部に入社、映画字幕を担当します。1925年には『大地は微笑む』第一篇・第二篇で字幕に加えて衣裳も担当しました。1929年（昭和4年）10月3日に結婚し、その後5人の息子をもうけました。

その後、京都のJ.O.スタヂオに移籍し、1937年（昭和12年）には映画プロデューサーに転向。並木鏡太郎監督の『南国太平記』（原作直木三十五）を製作しました。合併により東宝映画所属となり、1943年（昭和18年）には滝沢英輔監督の『伊那の勘太郎』をプロデュース。この作品は、後にプロレスラー「星野勘太郎」のリングネームの由来となりました。東宝では、芸能部長、東宝芸術協会専務理事を歴任しました。

プロレス界への転身と晩年

吉本興業への移籍を経て、力道山全盛時代の日本プロレスに移籍すると宣伝部長に就任し、プロレス興行を司るという異色の経歴を歩みました。晩年は世田谷区太子堂に居住しました。

押山保明は、映画界での監督、プロデューサーとしての活動に加え、プロレス界でのプロモーターとしての顔も持ち、その生涯は多岐にわたる分野で彩られました。彼の足跡は、日本のエンターテイメント史において特筆すべきものと言えるでしょう。

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