拓跋丕

拓跋丕（たくばつ ひ）

拓跋丕は、北魏の皇族であり、楽平王に封じられました。彼の生涯は、軍事的な功績と、不運な事件への関与によって特徴付けられます。

生い立ちと楽平王即位

拓跋丕は、明元帝と大慕容夫人の間に生まれました。生年は明らかではありません。422年（泰常7年）に楽平王に封じられ、車騎大将軍の号を与えられました。この称号は、彼の軍事的な能力に対する期待の表れと言えるでしょう。

南秦討伐

楽平王となった拓跋丕は、河西と高平の諸軍を率いて南秦王楊難当を討伐する任務を与えられました。彼の軍が略陽に到着すると、楊難当は恐れて仇池に逃げ帰りました。拓跋丕の軍令は厳粛であり、参軍事の高允の諫めもあって、兵士たちは略奪を行いませんでした。このことは、彼の軍事指揮官としての能力を示すとともに、民衆への配慮も怠らない人物であったことを物語っています。

高句麗出兵の諫止

北燕の馮弘が高句麗に亡命した際、太武帝は高句麗に馮弘の身柄の引き渡しを要求しましたが、高句麗はこれに応じませんでした。激怒した太武帝は高句麗への出兵を計画しましたが、拓跋丕は太武帝に出兵を諫める上疏を提出し、その結果、太武帝は出兵を思いとどまりました。この出来事は、拓跋丕が単なる軍事的な才能だけでなく、政治的な判断力も持ち合わせていたことを示唆しています。彼は、国家全体の利益を考慮し、慎重な行動を促すことができる人物だったと言えるでしょう。

劉潔事件と死

444年（太平真君5年）、劉潔が拓跋丕を擁立しようとした事件に連座し、憂憤のうちに死去しました。この事件の詳細は不明ですが、拓跋丕が皇位継承に関わる陰謀に巻き込まれたことが、彼の死に繋がったと考えられます。彼の死は、彼の政治的な才能が十分に発揮される前に、不運な形で幕を閉じたことを意味します。

諡は戻王と贈られました。

子の拓跋抜

子の拓跋抜が爵位を嗣ぎましたが、後に事件に連座して死を賜り、封国は除かれました。拓跋丕の血筋は、悲劇的な運命を辿ったと言えるでしょう。

評価

拓跋丕は、北魏の皇族として、軍事的な才能と政治的な判断力を持ち合わせていましたが、不運な事件に巻き込まれて若くして亡くなりました。彼の生涯は、北魏の歴史における複雑な権力闘争の一端を垣間見せてくれます。

伝記資料

『魏書』巻17 列伝第5
『北史』巻16 列伝第4

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