挑文師

挑文師（あやとりのし）とは

挑文師は、平安時代における日本の大蔵省織部司において重要な役割を果たした職位です。この職位は、主に高級織物である錦や綾、羅などの文様の作成と、その技術指導に従事する長官を指します。定員は4名で、彼らは織物の専門家として、職人を育てるために豊富な技術と知識を持っていました。

業務内容と構成

挑文師は、位階としては大初位下に相当し、番上官として技術者たちの指導を務めました。実際には、彼らは挑文生（あやのしよう）と呼ばれる技術者たちと共に、綾織りを行い、またその技術を監修したり指導したりしました。大蔵省織部司は、挑文師4名、挑文生8名、使部6名、直丁1名で構成されており、その下には染戸（品部）が関連していました。

染戸と技術の世襲

染戸は570戸に及び、主に錦綾織、呉服部、川内国広絹織人のような専門的な織物技術が存在しました。これらの職人たちは多くが畿内に住み、技術の世襲が義務づけられ、その結果、伝統技術が世代を超えて受け継がれる仕組みが確立されていました。各織工房は通常、3～7戸の職人が集まり、1台の織機を共有して運用し、1人当たり年に1、2疋の織物を生産し、特定の義務を免除されるという条件で活動していました。

国家の方針と技術の普及

711年、元明天皇の在位中に、挑文師たちは地方に技術を広める目的で派遣され、国の工房である国衙で錦や綾の織り方を教えることとなりました。翌712年にはその成果が現れ始めたとされています。「天平四年度越前国郡稲帳」や「天平六年度尾張国正税帳」などの資料からは、地方でも錦や綾、羅などを織るための機器が整っていたことが明らかになり、それに関連する織手の存在も確認されています。特に、尾張、駿河、近江などの地域において、その技術の受け継ぎが行われていたことが示されています。

西海道への広がり

さらに、大宰府においても称徳天皇の時代、769年には「綾師」が設置されており、このことから九州地方の国々にも綾の織成技術が浸透していたことがわかります。これにより、挑文師の活動が日本各地でより広範に展開され、国の経済や文化の発展に寄与したことは間違いないでしょう。

参照文献

本記事に関連する情報は、以下の文学から得られています。

• - 『岩波日本史辞典』p36（監修：永原慶二、岩波書店、1999年）
• - 『続日本紀』などの古典文献からの抜粋

詳しい内容や歴史的背景に興味がある方は、ぜひ関連文献をご覧ください。

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