捐納

捐納制度の概要

捐納（えんのう）、または別名捐輸、捐例、貲選、開納は中国の歴代王朝において採用された公的な売官制度です。この制度の特異性は、政府が公式に設けたものであり、天災や戦争、公共工事の費用など、財政難に直面した国家が仕組んだものだという点にあります。これは、私的に賄賂を渡して非公式に行われる売官とは異なり、制度化された形式を持つものでした。

歴史的背景と発展

明代以前の状況

売官制度の存在は戦国時代にまで遡り、『商君書』の中には「粟爵粟任則国富」のような記述が見受けられます。初期の中国社会では、官職が経済的利益と直結しているため、官位を得るための手段として売官が利用されていたことが、既にこの時代から明らかです。

明代の捐納の発展

正統年間に始まった捐納制度は、明代を通じて非常に盛況でした。例えば、「監捐」や「貢捐」などを介して、科挙の受験資格を得るために官立学校の生徒の資格を購入することができたのです。また、富裕な商人は、商業における制限があったため、捐納によって官職の地位を買うことが可能でした。これにより、商人階級が少しずつ政治に関与できる道を開かれたのです。

清代の制度的継承

清朝では、明代の制度が引き継がれ、さらなる普及が見られました。特に順治十二年には、廩生に関する捐納が導入され、康熙年間では文官職の捐納が初めて実施され、多くの捐納が経済的な困難を背景に行われました。特に三藩の乱の影響で、戦費不足から官職の捐納が急速に行われ、その結果多くの官職が創出されました。

捐納制度の変遷

捐納は時代を経るごとに変遷していきました。特に康熙年間からは多くの自然災害や戦争によって、捐納が行われる頻度が高まりました。例えば、1727年には直隷の水災を背景に捐納が施行されました。その後、乾隆帝の治下においても捐納制度は継続され、様々な災害や戦事の中で活用されました。

しかし、制度は一時的に停止されることもあり、例えば道光元年には捐例が一時停止され、これが各種の捐納の動向に大きな影響を与えました。やがて咸豊年間には、太平天国の乱とアロー戦争のため多くの捐納が実施されましたが、その中には実態を伴わない名誉官職も多く含まれていました。

捐納の主催と制限

捐納の運営は戸部の捐納局が管理をしており、1865年からは北京の京銅局や地方の捐局がその役割を担いました。捐納の対象は文職や武職であったものの、吏部や礼部の属官職は捐納の対象にはならず、特定の制限が設けられていました。

結論

捐納は特に明清時代において、中国の官職制度における重要な役割を担っていました。財政的な困難が生じた際に、官職の購入という形で人々に新たな可能性を提供し、またそれによって国家と市民との関係を深める一因となったことは否定できません。最後には、歴史の流れと共に変わりゆく制度の中、自らの役割を果たした捐納は、歴史的にも社会的にも価値のある制度であったと言えるでしょう。

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