授刀衛

授刀衛の概説

授刀衛（じゅとうえい）は、759年に設立された令外官で、五衛府を補完する目的で、授刀舎人寮が改編されて誕生しました。この官職は、歴史的に重要な役割を果たし、特に764年に起こった藤原仲麻呂の乱において、孝謙上皇側の主要な力として機能しました。その後、765年には近衛府に改編され、807年には左近衛府となりました。

設立の背景

授刀衛の起源は、707年に設置された授刀舎人寮にさかのぼります。当初、この組織は五衛府を上回る軍事組織として位置付けられていましたが、728年に授刀舎人寮は中衛府に変容し、より一層権威を持つようになりました。この时点で授刀舎人は一時的に記録から姿を消しますが、746年には騎舎人と名称を改め再登場し、主に皇太子阿倍内親王（後の孝謙・称徳天皇）の警衛を担当しました。759年には、この授刀舎人に基づく新たな衛府として授刀衛が設立されたのです。彼らは天皇や皇太子に近侍し、警護の役割を果たすという重要な任務を担っていました。

授刀衛の役割

授刀衛は、授刀舎人の初期の性格を引き継ぎ、基本的には天皇や皇太子の警護を行う存在でした。彼らの出身は地域の豪族や武士階級で、兵衛と類似点を持っていました。また、騎舎人の存在も記録されており、彼らは行幸に随伴する騎兵としての役割を果たしていた可能性があります。このように、授刀衛は単に軍事部隊ではなく、皇室に近接する特殊な警護部隊として高い地位と責任がありました。

設立の理由

授刀衛の設立には主に二つの理由が挙げられます。一つは、当時の五衛府が弱体化したことから、新たな軍事組織が必要となったことです。特に、地元農民出身の兵士たちでは戦闘能力に限界があったため、天皇に直近の警衛部隊を設置する必要が生じました。もう一つは、藤原氏、特に藤原仲麻呂が個人的な私兵のような存在を求めたことです。藤原氏が大伴氏などの他の有力氏族を駆逐した状況で、より強固な力を求めた結果、授刀衛が設置されたと見られています。

授刀衛の性格

授刀衛と中衛府は設置の経緯が類似していますが、その忠誠心には違いがあります。授刀衛は孝謙上皇に忠誠を誓い、藤原仲麻呂に敵対する行動をとることで、皇室の保護者としての役割を果たしました。特に授刀督の藤原御楯が急死した結果、授刀衛は上皇の指揮下に入り、仲麻呂を抑える存在となったと考えられています。

組織体系

授刀衛の発足当初は督、佐、尉、志の四等官が設けられ、後の乱によって大将、中将、将監、将曹といった階級が設けられました。また、戦力としては授刀舎人が400名に設定されており、同規模の他の官府と比べて詳細な構成は不明な点があります。

結論

授刀衛は日本の古代官制において重要な位置を占めており、その設立経緯や役割、さらには歴史的背景においても多くの魅力的な要素を持つ機関でした。その振舞いや働きは、当時の権力闘争や社会構造を理解する上で欠かせないものと言えるでしょう。

もう一度検索